2011 Fiscal Year Research-status Report
254nmより短波長を出力する紫外線ランプによる消毒副生成物リスク低減技術の開発
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23760500
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 宏治 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70533123)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
農村部から都市部へ人口が集中しつつある都市型の社会では、都市における十分な水供給を行うことが必須不可欠の課題である。都市における安全安心な水利用を行う上では、水量・水質両面の充足が用排水システムに求められる役割であり、その中でも健康影響をもたらす消毒副生成物の制御が重要であることは論を待たない。さらに、気候変動による既存の水資源の不安定化が予想されることから、下水処理水の再生利用、地下水の有効利用など都市内部において新規の水資源を獲得することが必要となる。一方、これらの新規水資源は、既存の都市活動の影響を受けているため、水質面の安全性については一層の注意を払う必要がある。 都市部での水安定供給に向けて、下水処理水・新規地下水源の活用が期待されると同時に水質面のより厳しい監視が求められる。本研究では、新規消毒副生成物としてNDMAを取り上げ、その処理手法としての紫外線処理の効率化を検討する。事前の検討で、従来より短波長の紫外線照射が効果的である可能性が分かり、従来ランプ(254nm)より短波長の222nmランプを検討する。222nmランプによるNDMAの分解効率と溶存物質による分解への影響を検討した。水質条件によって254nmと222nmのどちらが効率的が異なる結果を得ることができた。両者を統合的に活用し、水質変動に柔軟に対応可能な"resilient"な(回復力のある)水処理システムを提案することを、次年度以降の目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、222nm紫外線ランプの使用の決定、222nm紫外線ランプを用いたNDMAの分解実験、溶存物質が存在する条件での紫外線処理効果の3点について検討した。 紫外線ランプの特性を出力波長スペクトル及び出力強度について測定した。紫外線ランプの出力強度測定は、紫外線試験において最も重要な事項の一つであり、ヨウ化カリウム線量計、222nm専用の紫外線強度計の2つの方法で評価した。 222nm紫外線ランプを用いてNDMA分解実験を行った。まず、最も理想的な超純水条件、濃縮が不要な高濃度(初期濃度100μg/l)にて行った。次に、水環境中で有り得る低濃度(初期濃度 100 ng/l)にて222nm紫外線による直接的分解を検討した。分解をさらに効率化できる手法として、過酸化水素添加による促進酸化分解処理を併せて検討したが、NDMA自体の分解には直接影響しないという結果を得た。 実際の環境水を処理する場合、紫外線による分解反応は水中の様々な溶存物質に影響を受ける。NDMAの分解に影響を与える因子として、下水二次処理水、地下水の新規利用シナリオを想定し、下水二次処理水中などに残存するフミン質、窒素汚染された地下水中の硝酸塩の2つの溶存物質を取り上げ、それらの影響について、実環境中で有り得る低濃度(初期濃度 100 ng/l)にて行った。 このように実施計画に概ね従う形で研究を遂行しており、順調な進展が達成されていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基にして、さらに水質因子の影響について検討する予定である。まず、硝酸塩の影響について検討する。硝酸塩は紫外域にて吸光を持ち、短波長側のほうがその吸収割合が大きくなる。222nmの紫外線が硝酸塩に吸収され、NDMAへの紫外線の到達を少なくし、分解を妨げるという影響が第一に考えられ、この影響について検討する。一方、紫外線によってNDMAが分解されると、ジメチルアミンと亜硝酸になる。しかし、紫外線が硝酸塩と反応すると亜硝酸を生成するため、分解産物であるジメチルアミンとこれらの亜硝酸性窒素が反応し、NDMAの再生成を引き起こす可能性がある。さらに、硝酸塩は亜硝酸になる過程で、反応性の高いOHラジカルを生成することも知られている。これらの影響がNDMAの処理でどのように生ずるかを検討する。一方、フミン質自体は、トリハロメタン及びNDMAなどの消毒副生成物の前駆体である。従って、消毒副生成物前駆体としてのフミン質が紫外線を吸収して分解する反応が生ずれば、人へのリスクを抑える処理となる可能性がある。最終的には、浄水工程最終段階での消毒副生成物リスクの低減を目的とした最適な処理システムの提案へとつなげる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
NDMA測定及び、水質因子の影響について検討する実験のための消耗品購入と、成果発表のための旅費の支払に充当する予定である。NDMA分析のための試薬、消耗品類の購入、分析のため必要となるガラス器具、プラスチック器具、分析用カートリッジなどの購入に充てる。成果発表については、複数の学会に応募を検討中である。
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Research Products
(2 results)