2012 Fiscal Year Research-status Report
254nmより短波長を出力する紫外線ランプによる消毒副生成物リスク低減技術の開発
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23760500
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 宏治 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70533123)
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Keywords | 紫外線水処理 |
Research Abstract |
平成23年度に得られた結果を基にして、さらに水質因子の影響について検討した。まず、硝酸塩の影響について検討した。硝酸塩は紫外域にて吸光を持ち、短波長側のほうがその吸収割合が大きくなる。222nmの紫外線が硝酸塩に吸収され、NDMAへの紫外線の到達を少なくし、分解を妨げるという影響が第一に考えられる。一方、紫外線によってNDMAが分解されると、ジメチルアミンと亜硝酸になる(Stefan, 2002, Helv. Chim. Acta., pp.1416)。しかし、紫外線が硝酸塩と反応すると亜硝酸を生成するため、分解産物であるジメチルアミンとこれらの亜硝酸性窒素が反応し、NDMAの再生成を引き起こす可能性があった。フミン質も硝酸塩と同様に紫外域にて吸光を持つため、222nmの紫外線を吸収し、NDMAの分解反応を妨げる可能性が考えられた。一方、フミン質自体は、トリハロメタン及びNDMAなどの消毒副生成物の前駆体である(Chen, 2007, Env. Sci. Tech., pp. 6059)。従って、消毒副生成物前駆体としてのフミン質が紫外線を吸収して分解する反応が生ずれば、人へのリスクを抑える処理となる可能性があった。消毒副生成物リスク全体を俯瞰して、フミン質の分解とNDMAの分解のどちらを優先するべきか、222nmの紫外線分解によるデータを取得し、考え方の整理を行った。その結果、顕著な再生成は起こりにくいという結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に得られた結果を基にして、平成24年度は、さらに水質因子の影響について検討した。硝酸塩及びフミン質の影響について検討した。さらに、実際の水環境中にあり得る低濃度のNDMAにおいて、検討を行った。硝酸塩は紫外域にて吸光を持ち、短波長側のほうがその吸収割合が大きくなる。222nmの紫外線が硝酸塩に吸収され、NDMAへの紫外線の到達を少なくし、分解を妨げるという影響が第一に考えられる。一方、紫外線によってNDMAが分解されると、ジメチルアミンと亜硝酸になる(Stefan, 2002, Helv. Chim. Acta., pp.1416)。しかし、紫外線が硝酸塩と反応すると亜硝酸を生成するため、分解産物であるジメチルアミンとこれらの亜硝酸性窒素が反応し、NDMAの再生成を引き起こす可能性があった。フミン質も硝酸塩と同様に紫外域にて吸光を持つため、222nmの紫外線を吸収し、NDMAの分解反応を妨げる可能性が考えられた。一方、フミン質自体は、トリハロメタン及びNDMAなどの消毒副生成物の前駆体である(Chen, 2007, Env. Sci. Tech., pp. 6059)。従って、消毒副生成物前駆体としてのフミン質が紫外線を吸収して分解する反応が生ずれば、人へのリスクを抑える処理となる可能性があった。消毒副生成物リスク全体を俯瞰して、フミン質の分解とNDMAの分解のどちらを優先するべきか、222nmの紫外線分解によるデータを取得し、考え方の整理を行った。その結果、顕著な再生成は起こりにくいという結果を得た。 一方で、塩化クリプトンを用いた既存の222nmのランプではなく、キセノンを用いた新たなランプのほうが、より本研究の目的に合致する可能性があることが分かった。研究はおおむね順調に進展しているが、事業期間を延長し、別のランプを用いた検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に購入した塩化クリプトン紫外線ランプを用いて実験を行っていた。様々な条件での結果を元に平成24年度中に取りまとめを行い、学会で発表することを予定していた。ところが実験を進めていく中で、塩化クリプトンではなくキセノンを用いた新規の紫外線ランプの方がより目的に合致する可能性があることが判明した。キセノンを用いたランプは開発中の製品であり、研究開始時には入手できなかったものである。 そこで、新規のキセノンランプの試作品を紫外線ランプ会社から借り受けて試験を行うこととした。だが、試作品であったため、製品の借り受けのための調整及び実際の手配に予想外に時間を要した。このため、次年度において新規キセノンを用いた新規紫外線ランプでの追加実験とその解析と取りまとめ、学会での発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。 研究内容については、既存の222nmランプだけでなく新たなキセノンランプを含めた研究とする。また、単純にNDMAの分解だけでなく、222nmランプのときと同様に、水質の影響について具体的な検討を行う。水質影響としては、硝酸塩とフミン質の二つの水質項目に着目する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新規のキセノンランプの試作品を紫外線ランプ会社から借り受けて試験を行うこととした。このため、ランプについての新たな費用は発生しない。一方で、NDMAの分解実験、水質項目の影響などについての追加実験などにおいて、分析試薬、研究用試薬などの消耗品に関する費用が発生する。また、得られた結果を取りまとめるための費用として、結果の解析や、結果の学会での発表や出版などに関する費用が生ずる。このため、次年度において新規キセノンを用いた新規紫外線ランプでの追加実験とその解析と取りまとめ、学会での発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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Research Products
(3 results)