2011 Fiscal Year Research-status Report
環境・経済的持続可能性と人材移転に関する混合相補性条件の分析手法の提案
Project/Area Number |
23760504
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田畑 智博 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 講師 (40402482)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 木質バイオマス / 人材移転 / ライフサイクルアセスメント / 経済性評価 / 再生可能エネルギー |
Research Abstract |
本研究は、環境・経済的持続可能性と雇用の維持に着目し、将来発生しうる衰退産業から環境産業への人材移転の方法論を提案することを研究の目的とする。主要な研究課題は、(1)エネルギーシステムの構築による GHG削減可能ポテンシャルと現状の労働需給構造とのギャップの評価、(2)衰退産業と環境産業とのスキル類似性を踏まえたスキルマッチングシステムの構築、(3)炭素クレジット売却益等による所得補償を制約条件とした労働需給、GHG削減効果、経済性の分析とこれを踏まえた人材移転方法の提案である。平成23年度では、上記研究課題の(1)と(2)に取り組んだ。研究課題(1)では、廃棄物系、木質系バイオマスのGHG削減可能ポテンシャルを推計した。先ず前者は、実質的なGHG排出量がマイナスになるnet GHG reducerという概念を用い、焼却施設を対象としたその成立条件を考察した。結果として、神戸市では電力を約11万世帯に、温水を約17万世帯に供給すれば成立可能と試算された。次に後者は、和歌山県を対象としたエネルギー利用に伴うCO2削減効果と雇用創出効果を試算した。その結果、間伐材を石炭火力発電所の石炭代替とした場合、県全体で約11万6千tのCO2削減、約180人の雇用創出が可能となった。また、全国の切捨間伐材のエネルギーポテンシャルを雇用必要量とのギャップから調査した。その結果、年間のエネルギーポテンシャルは約488GJあるのに対し、この最大限利用には、現在の林業従事者数と間伐実績から、現状よりさらに2万4千人以上の林業従事者の雇用が必要なことがわかった。研究課題(2)では、スキルマッチングシステムの構築にかかるフレームワークを検討した。また、木質バイオマスのエネルギー利用に関するスキルを抽出するため、森林組合、木質バイオマスのエネルギー利用事業等を対象としたアンケート項目を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に対して、研究課題(1)の遂行に時間を要した。しかし、研究課題(2)は、スキル抽出のためのアンケート項目の作成までを完了しており、平成24年度においてアンケート調査を実施する予定である。当該研究課題の到達度をパーセンテージで表すとするならば45%であり、全体的な研究進捗度合いでいえば概ね順調に研究課題を遂行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度では、平成 23年度に得られた結果をもとに、 上記研究課題(2)として、 日本の主要な産業、関連協会等を対象として、各産業で用いられるスキル、将来の余剰人員数等のアンケート調査を実施する。これにより得られた結果から、クラスター分析を用いて、環境産業で必要となるスキルと他産業でのスキルの類似性を分析する。スキルの類似性分析の結果を踏まえ、衰退産業から環境産業への人材移転による労働需給構造の変化分析を実施する。分析においては、数理計画法を用いた最適化計算を実施する。これらの分析結果を踏まえ、スキルマッチングシステムの構築を行う。次に、上記研究課題(3)として、スキルマッチングシステムを用いて、炭素クレジット売却益等による所得補償を制約条件とし、人材移転の需給構造、 GHG削減効果、経済性の各要素を組み合わせた分析を実施し、これらの混合相補性条件を明らかにする。分析においては、数理計画法による最適化計算を実施し、各要素の均衡解が得られる人材移転条件を導出する。最後に、得られた結果を取りまとめ、混合相補性条件下における人材移転方法について論じる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記に記述した研究の推進方策に合わせて、平成24年度では、アンケートの実施、データ解析及びスキルマッチングシステムの構築にかかるワークステーションおよび関連ソフトウェアの購入、研究成果の学会等での報告や情報収集にかかる国内・国外旅費等の支出を計画している。
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