2011 Fiscal Year Research-status Report
油脂植物ジャトロファに含まれる毒性物質ホルボールエステルの生分解に関する研究
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23760505
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
赤尾 聡史 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30448196)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ジャトロファ / ホルボール / 生分解 / 微生物群集解析 |
Research Abstract |
化石燃料の代替が模索される中,半乾燥地でも生育が可能とされる油脂植物ジャトロファの生産が活発化している.ただし,ジャトロファは毒性物質(ホルボールエステル,以下ホルボール)を含有するため,ホルボールの拡散あるいは分解に関する知見が必要である.本研究では生分解性に焦点を当てた検討を行い,ジャトロファ油生産における廃水処理に対する知見の提供を目指す. 平成23年度は試薬(Phorbol 12-Myristate 13-Acetate)を用いた分解実験を行った(遮光,室温,振とう).R2A培地をベースとする培地(Agarはのぞく)にホルボールと植種(消化汚泥由来)を添加し,5日間の培養を行った.比較として,植種を行わず,アジ化ナトリウムを添加する系を用意した.その結果,実験系および比較系ともホルボールの分解が見られた.ホルボールの分解を1次反応と仮定した場合の分解速度係数は,実験系:-0.22 1/day,比較系:-0.13 1/dayと求まった.実験系の分解速度が大きいことから,実験系の微生物群集解析を現在進めている. また,Makkarら(Plant secondary metabolites,Humana Press,p.101-105,2007)が推奨するホルボール分析環境を整備した.実際のジャトロファからMakkerら(2007)による方法でホルボールを抽出し,2.4 mg/g-ジャトロファのホルボールを回収した.ホルボール確保が実験上の大きな制約であり,ホルボールが自前で用意できるようになったことから,これらを用いた培養実験を今後進める.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は,予算の大部分をホルボール分析環境の整備に充当したことから,それ以外の予算が相対的に僅かとなり,慎重な予算管理が必要となった.したがって,外注分析などで進捗の遅れを補う工夫が取れない状況であった. また,培養実験系の構築に思いのほか時間を要した.ホルボールが水に溶解しない特性上,ホルボール含有培養系を用意するのに工夫を要した.培養実験実施後,微生物群集解析をPCR-DGGE法で進めているが,こちらの方法も時間を要することから微生物種推定までには至っていない.以上から,総合的にやや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
ジャトロファよりホルボールの回収を進め,これを用いた分解実験を行う.分解実験は平成23年度に確立した方法で行う.なお,平成23年度では生物が関与しない分解が見られたことから,ジャトロファ由来のホルボールでもそのような分解が起こるか,起こる場合には分解機構を明らかとする.酸素の影響,抗酸化剤の添加を検討する. 生物分解に関しては,非生物的な分解が進む系を比較に実施する.好気および嫌気培養を検討する.また,生物分解が明らかとなった場合(比較系に対して有意差ありとなった場合),微生物群集解析を進め分解関与菌の推定を目指す. 最終的に生物,非生物的なホルボール分解の程度を示し,どのような状況が廃水処理におけるホルボール処理に向いているのかを提示する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の残予算は1,341円であり,総額としてほぼ予定通り研究費を使用した.1,341円を残した理由は,残額では購入できるものが限られ,次年度に合算して必要なものを購入すると計画したためである.平成24年度に必要な消耗品購入に充当する予定である. 平成24年度は,50万円以上の備品購入の予定はなく,基本的に試薬費,消耗品費および謝金(実験補助)を予定している.また,成果発表(日本水環境学会を予定)を予定しており,当該予算を必要とする.平成23年度は微生物菌種推定に遅れがあるが,必要に応じて外注分析を行うなど,予算範囲内で柔軟な運用も検討したい.
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