2011 Fiscal Year Research-status Report
崩壊機構の異なる鉄筋コンクリート造架構の損傷量進展過程に基づく構造性能定量化
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23760517
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 典之 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (60401270)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 鉄筋コンクリート構造 / 全体崩壊型 / 損傷量評価 / 耐震安全性 |
Research Abstract |
1981年以前の旧基準で設計された層崩壊型の建物を中心に地震被害が生じたこれまでの経験から,各層の鉛直支持部材の耐震性能に着目した耐震診断手法,被災度判定手法が整備されてきたが,東海,東南海,南海地震などの来たるべき大地震では,現行基準で設計された全体崩壊型の建物も被災し,地震後に建物の機能が失われることがある。ところが,現行基準で設計された全体崩壊型の建物は現行の耐震診断で評価対象とされることは殆どなく,被災建築物の被災度を評価する具体的な基準も定められていない。そこで,現行基準で設計された全体崩壊型の架構に生じる地震損傷の進展に応じた構造性能の定量的評価手法を実験的および解析的手法により検討した。実験的検討においては,梁降伏先行型の全体崩壊型で設計された鉄筋コンクリート造構造物を想定し,梁に生じる地震時ひび割れ量進展過程を評価すべく,梁縮小試験体3体を作製し,曲げせん断ひび割れの進展を詳細に追跡する静的載荷実験を行った。実験結果に基づき,平均曲げひび割れ間隔の進展過程,可視ひび割れ発生時のコンクリート歪度,曲げせん断ひび割れの進展角度移行点に着目したひび割れ長さ進展モデルを構築,提案した。解析的研究においては,損傷量と構造安全性の関係を物理量として定量的に表現(ただし異なる架構の性能を比較するため,建物規模による規準化と,限界状態までの余裕度としての規準化の2種類を提示)する手法を提案し,既往の実大架構実験結果を提案手法に適用し,架構の損傷量進展と構造安全性能の関係を試算した。上記の実験的検討を通した損傷量進展のモデル化と,解析的検討を通した損傷量進展に対する構造安全性能の推移のモデル化により,現行基準で設計された全体崩壊型の架構に生じる地震損傷の進展に応じた構造性能の定量的評価手法の基礎が構築できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定では平成23年度中に実施する実験的検討に加え,平成24年度に実施予定の解析的検討にも着手することができ,当初の計画以上に進んでいる部分がある。一方で,材料費の高騰等で配分予算内で製作可能な試験体が架構試験体ではなく部材試験体になったことなどもあり,全体としては「おおむね順調に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
架構試験体の製作が出来なかった分,既往の架構試験体に対する実験結果を参照しながら解析的検討を中心に進める予定である。ただし,既往の架構試験体の実験結果では解決しない問題点が生じた場合は,その解決のために実験的検討が必要な箇所を明確化する検討を行う予定である。解析的検討の具体的な内容については,崩壊機構の異なる架構,靱性能力の異なる部材をパラメータとして,架構内部材の損傷量進展とそれに伴う構造安全性能の変化をパラメトリック解析により定量化する予定である。その結果を用いて,研究代表者が従来より提案しているライフサイクル耐震修復性能評価における「補修量-補修費用」関係モデルに架構の崩壊機構がどのように影響するかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究成果において提案している損傷量推定手法,および,架構の損傷量進展と構造安全性能の関係を定量的に表示するモデルを組み合わせ,崩壊機構の異なる鉄筋コンクリート造架構事例を複数用意し,それらの損傷量進展とそれに伴う構造安全性能の変化を分析する。研究費は,崩壊機構の異なる鉄筋コンクリート造架構をパラメータとしたパラメトリック解析におけるハードウェアおよびソフトウェア費用,当該研究成果の公表にかかる費用として使用する予定である。
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