2011 Fiscal Year Research-status Report
建築鉄骨構造におけるき裂発生後の残存性能評価に関する研究
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23760518
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊山 潤 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30282495)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | き裂 / ボイド / 非破壊検査 / コンピュータ断層撮影(CT) / 塑性変形 / 破断 |
Research Abstract |
本研究は、大きな塑性変形振幅を与えた鋼材のき裂進展状況を非破壊で観察し、既存のき裂進展則との対応関係を検証するとともに、き裂長さと耐力や残存エネルギー吸収能力との対応関係を調査し、き裂発生後の残存性能評価手法の確立を目指すものである。この目標を達成するため、本年度は、まず、現有試験装置に設置しているアクチュエータを改修するとともに、計測システムの再整備を行い、本研究課題で計画している引張試験片の実験環境を整備した。次に、ノッチ形状砂時計型丸棒試験体の設計および製作を行った。ノッチ形状は、過去の研究で実績のある形状を一種選択し、これが有るものと無いものの2シリーズを設定した。また、厚板の場合には中央偏析の影響が想定されるため、板厚の端部から作成したものと、中央部から作成したものの2シリーズとした。 計4シリーズについて、各10本づつ作成し、与えた塑性歪み量とボイドやき裂の進展状況を対応づけられるように配慮した設計とした。計画したとおりX線CTにより内部状況が観察できるかどうかの確認と、本実験での予ひずみ量を決定するため、作成した試験体のうちの4体を用いてパイロットテストを行った。引張試験により、最大耐力付近までの予ひずみを与えた試験体と、破断直前までの予ひずみを与えた試験体を作成し、CT観察を行ったところ、ノッチが有るものについては、表面からのき裂進展が確認された。またノッチが無いものについては、板厚中央から作成した試験体の中央部にボイドが観察された。これらの結果より、この試験方法および観察方法により表面からのき裂や内部のボイドの生成状況が観察可能であることが確認された。また同時に、き裂進展解析を行うための有限要素解析モデルの構築を行い、実験との対応関係を調べる方法の調査検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験環境の整備、試験体の作成、引張試験の実施およびCT観察、およびこれらの可視化等、およそ本年度の研究実施計画として予定した項目は達成した。引張試験は全ては完了していないが、これはより効率的にボイド生成およびき裂進展を観察するため、本年度は実験範囲を限定するためのパイロットテストに注力したためであり、次年度に行う実験ではより効率的な観察が期待される。また、次年度行う予定であった、き裂進展を考慮した有限要素解析準備を前倒しで開始している。次年度に行うべき課題も明確となっており、研究としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度行ったパイロットテスト結果を基に試験範囲を定め、残り試験体について引張試験計画を再構築し、実験実施およびCT観察を行う。これと同時に本年度準備を行った有限要素解析を進展させ、実験結果との対応関係の調査および既往き裂進展モデルとの比較を行う。また、本研究課題で得られたデータをより効率的に活用できるよう、そのデータの整理方法や公開方法についても検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費の多くは、有限要素解析ソフトウェアライセンス使用料として使用する。その他、解析・検討に必要なパーソナルコンピュータおよび周辺機器の購入・整備費用、および研究発表を行う旅費として使用する。
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