2012 Fiscal Year Annual Research Report
建築鉄骨構造におけるき裂発生後の残存性能評価に関する研究
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23760518
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊山 潤 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30282495)
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Keywords | き裂進展 / 非破壊検査 / 残存性能 / 有限要素解析 |
Research Abstract |
本研究は、建築鉄骨骨組が地震外力を受けて大きく塑性変形した後にき裂が生じた場合において、その後どの程度の残存耐力、残存変形性能を有するかを定量的に評価することを目的とする研究である。既往研究では材料レベルのき裂進展則が提案されているが、実際の建築鉄骨構造部材に含まれるような複雑な形状の場合に、どのようにき裂進展則を適用すべきかは明らかではない。そこで大きな塑性変形振幅を与えた試験体のき裂進展状況を非破壊で観察し、既存のき裂進展則との対応関係を検証するとともに、き裂長さと耐力や残存エネルギー吸収能力との対応関係を調査し、き裂発生後の残存性能評価手法の確率を目指すものである。 本研究事業においては、まず高精度で所定の変位を与えることができる引張試験装置の整備を行った。次に試験体として、丸棒に形状の異なる切り欠きが入っているものを多数製作した。これは実際の構造物における種々のノッチの効果を再現するためのものである。この試験体と試験装置を用いて、多数の鋼材試験片に引張力を加え、最大耐力に至る程度から破断直前のものまで、異なるレベルのひずみを受けた鋼材を作成した。 こうして得られた多数の試験体をX線CT観察を行い、内部および表面のボイドやき裂を観察し、画像処理により、この面積や長さを定量的に計測した。この結果を有限要素解析によるき裂進展解析と比較した結果、切り欠きが鋭く応力・歪み集中が著しい状況においてはおよそ解析結果と計測結果が一致することがわかった。ここで用いた有限要素解析は比較的簡易かつ汎用のものであり、このような簡易な解析によりある程度破壊が追跡可能であることが明らかになったことは今後の実用性を高めたものと評価できる。ただし、今回再現した応力状態は一様引張に限られており、さらに実用性を高めるためには応力勾配のあるような状況についても検討を進める必要があるものと考えられる。
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