2011 Fiscal Year Research-status Report
脱着可能なパネル部材により剛性とエネルギー吸収能力を付与した超高靭性型構造の開発
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23760520
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
井上 圭一 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (70333630)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 柱 / 袖壁 / プレキャスト / エネルギー吸収能力 |
Research Abstract |
平成23年度には、研究の目的に沿って次に示す内容を行った。(1)既往の研究のデータ収集・分析:通常の袖壁付柱の実験的研究、強度型のプレキャスト袖壁の実験研究の文献について文献調査し、本研究における実験計画について参考にとする。袖壁を有する構造物の解析的研究についての文献は少なく、袖壁を有する構造物の地震応答に関する研究について参考になるものは多くない。まだ今後の研究の蓄積が必要であるので、本研究でも貢献していくことが必要である。(2)プレキャスト袖壁パネルに使用する低強度モルタルの調合計画:本研究では、袖壁はエネルギー吸収要素として期待する。低強度化と必要な連続繊維との付着性状についても検討する必要がある。モルタルの調合を変化させた連続繊維補強パネル試験体を作成し、曲げ試験を行い、モルタルの調合、連続繊維の性状について考察を行った。(3)袖壁パネルの接合部についての考察:接合部は、できるだけ施工が簡略的にでき簡単に袖壁を取り変えることができることが望ましいという観点から、コッターを躯体に接合して袖壁パネルを接合する接合形式を考えた。コッターの作製方法について、いくつかパラメータを与えて接合部の縮小試験体を作製して載荷試験を行った。この試験からは、コッターの接合部は柱などの変形に追随できることが確認できたが、コッター設計の詳細についてはさらなる検討が必要であり、接合部については次年度も検討を続けることとする。(4)袖壁付柱の試験体の設計、作成、載荷試験:既往の研究や本研究で検討した基礎的なデータをもとに袖壁付柱の試験体の設計、作成を行った。鉄筋コンクリートと鉄骨の2種の構造形式を設定した。袖壁付柱の載荷試験を行った。主に、水平荷重-水平変形関係についての計測を行い、実験結果をまとめた。(5)地震応答解析:地震応答解析のプログラム整備を行った。詳細な解析、検討については次年度以降行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査について、おおむね進めることができている。既往の論文を参考にできるところもあり、また袖壁付柱に関する解析的な研究はまだ多くないため、本研究でも地震応答解析を行うことの必要性がある。低強度モルタルの調合、パネルの補強のために用いる連続繊維の性状について検討するためのパネルの曲げ実験を行い、その力学性状について考察を行い、袖壁付柱試験体に持ちいる袖壁パネルの設計に活かすことができた。接合部に関する縮小実験を行った結果、本研究で考えているコッターは、変形には追随できることが分かったが、適切なコッターの寸法などについては、今後続けて検討していきたいと考えている。既往の文献、材料、ディテールの検討をもとに、試験体の設計・作製を行った。作製した試験体については、載荷試験も行うことができ、一部当初の予定より進めることができた。荷重変形関係についてなどおおよその性状については把握できた。詳細な検討については今後も続けて行う。地震応答性状について解析的な検討を行うための解析プログラムの整備を始めることができた。具体的な解析や検討については次年度以降行う予定である。以上より、現在までの達成度としては、一部計画より進展している内容もあるが、全体としてみるとおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
プレキャスト袖壁パネルによるエネルギー吸収能力をより高めるために、プレキャストパネルの繊維補強の改良を検討し、より簡便で構造性能を向上させた補強方法について確認するための試験体を作成する。袖壁付柱の載荷実験を行い、性能の検証を行う。より高靱性の柱に追随できるような変形能力が高い袖壁パネルを目指す。前年度、プレキャスト接合部の開発を試みている。接合部に損傷を生じる場合には、袖壁パネルのエネルギー吸収能力を十分に発揮できないため、接合部の損傷を極力少なくする必要がある。接合部での損傷をさせないようにしながらも、高靱性の柱に接合しても力学性状には影響しないような接合部を続けて検討していく。袖壁パネルを連続繊維、接合部をパラメータとし、袖壁付柱の試験体を作成し、載荷実験を行い、高靱性柱の袖壁によるエネルギー吸収について検討を続けていく。また、高靱性の柱を有する建物に低強度高靱性の袖壁パネルを設置した場合の地震応答低減効果について定性的、定量的に明らかにしていくために、解析プログラムの整備、解析の実施を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
プレキャストパネルの連続繊維による補強方法を改良した性能実験を行う。このための試験体作成費用を使用する。接合部についてより詳細な検討が必要と考えているので、接合部試験体の作成を行い、載荷実験を行い検討していきながら、より構造性能の優れた接合部の開発を目指す。そのための試験体作成のための材料費、載荷試験のための治具の作成費などを使用する。プレキャストパネル前年度に引き続き、袖壁付柱の試験体を作成し、袖壁パネルの構造性能をより十分に引き出すための実験的検討をしていく。試験体作成、載荷試験に関わる治具作製、計測装置などに物品費として研究費を使用する。また、これまで得られた成果をとりまとめ、研究成果を発表するために、国内の学会、国際会議への旅費を使用する。実験、解析とも学生の協力が必要となるため、謝金を使用する。試験体撤去やその他に関わる費用も使用する計画である。
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