2011 Fiscal Year Research-status Report
施工設計法の確立に向けたフレッシュコンクリートのレオロジーモデルの構築と定量化
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23760523
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
三島 直生 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30335145)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | フレッシュモルタル / レオロジー / 回転粘度計 / ダイラタンシー / 間隙水圧 / 内部摩擦係数 |
Research Abstract |
近年、鉄筋コンクリート構造物に要求される性能は高度化しており、それに伴う使用材料の多様化や配筋の過密化、また骨材事情の悪化等によりコンクリートの打設難度の上昇が問題となっている。ジャンカなどのコンクリートの充填不良は、断面欠損などにより構造性能および耐久性能に悪影響を及ぼし、また、ポンプ圧送時に閉塞が起これば、打設が一時停止することによりコンクリートのコールドジョイントの発生などが危惧される。一度発生した施工不良は、場合によってはその後の補修・改修に多大な労力とコストを費やすことになる。今後の国内の経済・社会情勢を考慮すると、より高品質な鉄筋コンクリート構造物を、確実に生産していくための技術の確立が急務である。 これに対して本研究では、このコンクリート工事の施工設計に不可欠な、フレッシュコンクリートのレオロジーモデルを構築し、施工設計の基礎となる理論を確立することを目指す。高濃度サスペンションであるフレッシュコンクリートのレオロジー性質には、現時点で適切に評価できる試験方法が無いため、タイプの異なる複数の試験装置を試作し、正確な変形特性を測定することを目指す。 本年度は、モルタル用二重円筒式回転粘度計を用い、様々な調合のモルタルに対して、レオロジー試験を行い、ダイラタンシー特性の評価を行った。その結果、各種の混和材料がレオロジー性質に及ぼす影響が明らかとなり、また、それらの結果を用いて、フレッシュモルタルの粘塑性流動モデルの定式化を行った。さらに、ダイラタンシーの発生していない定常流動状態は、ビンガムモデルでモデル化できることを示し、この定常状態においても内部摩擦に起因したせん断抵抗が支配的であるという実験結果から、オーバーシュートだけでなく定常状態も含めたフレッシュモルタルのほぼ全てのせん断抵抗を固体粒子の内部摩擦で一貫して説明できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、試験方法の検討に先んじて、既存の回転粘度計を用いた評価をさらに進めることにより、モデルの定式化を優先した研究計画とした。これは、試験装置の開発を行うに当たって、どの様なレオロジー特性の評価が必要であるかを明確にし、また、定量的に評価するための定式化を先に行うことで、試験装置の開発がよりスムーズに行うことができると考えられたためである。 現時点で既に、高濃度サスペンションの閉塞現象や振動時の流動化を評価できるモデルの定式化を終え、また、この定式化により、新たな事実も明らかになるなど、研究としては充分に計画上の到達点に達していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに提案したモデルの検証作業を進める。さらに、これまでの検討がフレッシュモルタルが中心であったために、試験装置の大型化を検討し、フレッシュコンクリートでの試験をできる体制を整えることを目指す。また、回転粘度計以外の形式の試験装置に関しては、慎重な計画の立案が必要であることが、これまでの実験結果から明らかになってきたため、この点は実験を行いながら、全く新しいタイプの試験装置の構想を固めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フレッシュコンクリート用の大型の回転粘度計の試作にはコストがかかりすぎると思われる。このため、既存試験装置の改造などで効率的に対応できないか現在検討を進めている。当該の経費には、繰り越し分の予算を充てる。また、改造等の対応ができない場合には、携帯式の小型コンクリート用試験装置の開発を進めることとする。 フレッシュモルタルに関する検証実験は、本年度と同様に進め、提案モデルの検証を進めていく予定であり、実験材料代および消耗品代は本年度と同様の出となる。 また、本研究成果を学会論文として2編作成・投稿済みであり、このための旅費等の経費も支出予定である。
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