2012 Fiscal Year Annual Research Report
曲げ降伏型連層耐震壁の鉄筋コンクリート構造物への積極的な活用を目的とした研究
Project/Area Number |
23760524
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂下 雅信 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50456802)
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Keywords | ピロティ / RC造 / 連層耐震壁 / 枠梁 / 曲げ降伏 / 応力計測 |
Research Abstract |
骨組架構に組み込んだ曲げ降伏型鉄筋コンクリート造連層耐震壁の地震時抵抗機構を解明することを目的とし、1階を耐震壁のないピロティ階、2~4階を連層耐震壁とした縮尺30%のRC造試験体2体を用いた静的載荷実験を実施した。試験体は、昨年度実施した有限要素法に基づく解析結果に従い、1階の全体曲げや層崩壊が生じる前に、2階連層耐震壁の脚部が曲げ降伏するように設計した。実験変数は、連層耐震壁を支持する2階枠梁の主筋量(曲げ強度)である。載荷実験では、昨年度実施した数値解析の妥当性を検証するために、3分力計を用いた1階ピロティ階の応力計測も実施した。 いずれの試験体でも、数値解析による予測通りに、2階連層耐震壁脚部の曲げ降伏した後、2階のみに変形が集中することなく、1階圧縮側柱脚部を回転中心とするような崩壊機構が形成された。一般に曲げ降伏型の耐震壁を設計する場合には、連層耐震壁の曲げ圧縮域である側柱脚部に変形が集中するため、靭性能を向上させるための横補強筋が多く配筋される。しかし、本実験結果から明らかになったように、本来変形が集中するはずの側柱脚部の損傷は破壊直前まで軽微に抑えられており、代わりに1階圧縮側脚部の変形量が大きくなることが分かった。したがって、連層耐震壁が曲げ降伏するピロティ架構では、靭性能を向上させるための補強は、2階耐震壁脚部ではなく、1階柱脚で行う必要があることが実験結果より立証された。一方で、数値解析による予測と異なり、2階梁柱接合部におけるせん断滑りが本実験試験体の最終的な破壊原因となった。せん断滑りは、載荷中に繰り返し開閉した斜め方向のひび割れ面で生じており、配筋された鉄筋を避けるように破壊面が形成されていたことから、靭性に富む架構を実現するためには、連層耐震壁下の柱梁接合部の配筋にも十分な配慮が必要となることが明らかとなった。
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