2011 Fiscal Year Research-status Report
高曲げ強度を有するハイブリッド型繊維補強ポーラスコンクリートの開発
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23760532
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
齋藤 俊克 日本大学, 工学部, 助教 (70547819)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ポーラスコンクリート / 繊維補強 / 機械的性質 |
Research Abstract |
本研究では,粗骨材の粒度分布を考慮し,長さの異なる短繊維を複合使用して各粒度の粗骨材間を架橋すること,結合材としてのセメントモルタルを繊維補強すること並びに,結合材としてのセメントモルタルをセメント混和用ポリマーの混入によって改質することによって,高曲げ強度を有するハイブリッド型繊維補強ポーラスコンクリートを開発する。2年の研究期間の初年度である平成23年度は,以下に示す3項目の研究を遂行している。(1)長さの異なる短繊維を複合使用した繊維補強ポーラスコンクリートの機械的性質(2)結合材として繊維補強セメントモルタルを使用した場合の機械的性質(3)結合材としてポリマーセメントモルタルを使用した場合の機械的性質 研究成果として,(1)では,繊維補強ポーラスコンクリートの機械的性質は,40mmの繊維の混入割合が大きいものほど優れる傾向にあることを見出している。(2)では,ポーラスコンクリートの結合材を繊維補強セメントモルタルとすることは,一般的な繊維補強コンクリートに用いる繊維量に比べて,少量の繊維の混入で効果的な性能改善ができるため,有用な補強方法であることを明らかにしている。又,この研究成果を踏まえて,ポーラスコンクリートにおける更なる繊維補強効果が期待できる微細(ミクロ)な繊維と粗骨材を架橋する長さ(マクロ)を有する繊維との複合利用については,平成24年度に検討する予定である。(3)では,結合材をポリマーセメントモルタルとした繊維補強ポーラスコンクリートの曲げ性状は,ポリマーセメント比の増加に伴って顕著に改善されることを見出している。 以上のことから,本年度の研究成果は,ハイブリッド型繊維補強ポーラスコンクリートの開発において,必要とされる機械的性質である圧縮強度,静弾性係数,曲げ強度及び曲げタフネスに対するハイブリッド型繊維補強効果の解明に寄与していると認識している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度における高曲げ強度を有するハイブリッド型繊維補強ポーラスコンクリートの開発については,研究実績の概要に示したように,(1)長さの異なる短繊維を複合使用した繊維補強ポーラスコンクリートの機械的性質,(2)結合材として繊維補強セメントモルタルを使用した場合の機械的性質,(3)結合材としてポリマーセメントモルタルを使用した場合の機械的性質のいずれの項目においても,予想以上の研究の進展があった。それらの成果を踏まえて,(1)の研究成果については,セメント協会のセメント・コンクリート論文集(No.66)に投稿する準備をしている。又,(2)の研究成果については,日本コンクリート工学会のコンクリート工学年次論文集(Vol.34)に投稿しており,審査結果が「条件付き採用」であったため,修正論文を提出し,最終審査の結果待ちの状況にある。更に,(3)の研究成果については,既にセメント協会のセメント・コンクリート論文集(No.65)の審査が終了し,論文が掲載されている。又,本研究の一部は,申請者のみならず所属研究室の大学院生(M1)が卒業研究であった昨年度から継続しているもので,現在修士論文の研究テーマとしており,今年度は卒業研究生5名とともに実験を行っている。そのため,実験が工程通りに進んでおり,当初の計画以上の研究進展の一助となっている。 以上のことから,平成23年度の研究成果から,審査論文2編(条件付き採用1編を含む)の研究業績を得ることができ,当初の計画以上に研究が進展していることを裏付けている。又,平成24年度は,平成23年度の研究の発展・応用した内容を多数包含していることから,更なる研究成果を見込むことが出来ると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年の研究期間の最終年度である平成24年度においては,前年度の研究成果を踏まえて,これまで行ってきた各実験要因の中から優れた性能が得られた調合条件を選択して,長さの異なる短繊維を複合使用し,結合材を繊維補強ポリマーセメントモルタルとしたハイブリッド型繊維補強ポーラスコンクリートの機械的性質について検討する。又,繊維補強ポーラスコンクリートのハイブリッド型補強による性能改善を機械的性質以外の観点から評価するために,耐久性試験としての乾湿繰返し試験及び凍結融解試験を行う予定である。更に,これまでに行っている研究成果及び平成23年度の研究成果をもとに,空隙率及び機械的性質を同時に考慮した高曲げ強度を有するハイブリッド型繊維補強ポーラスコンクリートの調合設計法を確立する。調合設計法の確立における検討項目を以下に示す。(1)機械的性質の制御因子の検討(2)調合設計因子の検討(3)空隙率,機械的性質の制御因子及び調合設計因子の相互関係の検討(4)繊維補強ポーラスコンクリートの調合設計法の提案 (1),(2)及び(3)については,本研究成果に対してすでに確立している考え方を応用することで検討することができると考えている。又,(4)については,これまでに提案している繊維補強ポーラスコンクリートの調合設計法を更に汎用なものにするための検討項目である。ハイブリッド型繊維補強ポーラスコンクリートの合理的な調合設計法を確立することで,大きな連続空隙率を有しながら,高曲げ強度を発揮するポーラスコンクリートの製造が可能になるため,建設分野におけるエコマテリアルとしての用途が拡大することに繋がると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に引き続き,平成24年度においても,研究の大部分は,ハイブリッド型繊維補強ポーラスコンクリート供試体を作製し,それを用いた実験的研究となることから,それに要する使用材料費(補強用繊維,細骨材,粗骨材など),実験用消耗品(高感度変位計,ウエス,離型剤など)などが主たる計上となる。又,圧縮及び曲げ試験後の供試体の空隙率を測定するために,所定の寸法に切断する大型コンクリートカッターの替え刃は,研究を通して多く利用するため,消耗が激しいことから予算計上している。更に,研究期間の最終年度にあたる平成24年度には,研究成果の取りまとめを行うことから,日本コンクリート工学会の年次大会(広島),日本建築学会の大会(名古屋)並びに東北支部研究報告会(八戸)での論文発表に際しての,論文投稿料,出張旅費,論文別刷代などを計上している。又,本研究を総括し,研究報告書を製本することを検討しており,印刷代を計上している。 次年度繰越金が発生した主な理由としては,予算計上していた日本建築学会東北支部の研究報告会(秋田)及び日本コンクリート工学会のコンクリート工学年次大会(大阪)への出張旅費を次年度繰越ができない余剰分が発生した学内研究費でまかなったため及び,供試体の圧縮及び曲げ試験時の荷重測定の精度の向上を目的に,圧縮薄型荷重計の購入を計上していたが,既存の試験機を改造することで対応でき,安価で済んだためである。なお,上述したように,予算計上時に未決定であった今年度の学会発表の会場が八戸,広島,名古屋と遠方であることから,次年度繰越金はそれらの出張旅費として支出される予定である。
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Research Products
(1 results)