2012 Fiscal Year Research-status Report
火災を受けた鋼架構の機能維持および再使用性評価技術の開発
Project/Area Number |
23760541
|
Research Institution | Building Research Institute |
Principal Investigator |
鈴木 淳一 独立行政法人建築研究所, 防火研究グループ, 研究員 (10453846)
|
Keywords | 鋼架構 / 火災 / 再使用性 / 熱応力 / 機能維持 / 残留応力 / 再加熱 |
Research Abstract |
建築物の耐火設計では、火災時における部分架構・部材の崩壊温度を終局耐力に基づき推定している。一般的な設計では、火災時の構造体の崩壊に対する安全性については検討するが、火災後の再使用性までは十分に検討しておらず、崩壊を免れた構造体の損傷・再使 用性等を設計段階に想定できてない。 本研究では、火災後における構造体の機能維持・再使用性と損傷状況の関係を明らかとするため、火災時の加熱・冷却過程における鋼架構の力学的挙動を解析・実験的検討に基づいて分析し、定量的に把握することを目的とする。 本年度、部材実験においては、柱・梁部材を高温炉を用いることにより部材温度を漸増させ、温度上昇時に部材に導入される熱応力、熱応力の導入にともなう部材の変形挙動を把握することが可能となった。また、柱・梁材の部材実験とともに昨年度の解析を発展させ、架構の加熱冷却過程における残留変形および残留応力の程度、残留応力の解放の効果を把握するために有限要素法(二次元、三次元)による弾塑性熱応答解析を行った。解析対象架構は昨年と同様の12層3スパン(階高4 m、スパン長10 m)とした。解析において想定する火災は建物の複数スパンが火災となることを想定した。火災・火害の程度として、部材の最高履歴温度(Tmax)を、100℃から崩壊の直前温度の範囲で設定した。火災後の再使用・修復可能性の検討として、部材の局所再加熱による残留応力解放の効果を分析した。その結果、再加熱範囲が小さく、高温であるほど残留応力が低減することが明らかとなった。しかしながら、変形については、残留応力の低減ほど変化しないことも明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
加熱・冷却を被る部材実験実施とともに、解析的検討により架構内の部材の熱応答および残留応力の解放方法に関する知見を蓄積できたことは大きな成果であった。さらに、三次元有限要素法を用いた火災時における建物の熱応答解析、崩壊解析についても検討をすすめた。部材実験で得られた知見を取り込み、再使用性及び機能維持を確保するための準備が整いつつあるといえる。 本年度は梁部材の実験にも取り組み、火災加熱を受ける部材の挙動の一端を把握することが可能となった。熱応力解放の効果に関する部材実験の一部は、装置等の改良を要するため来年度の実施となったが、研究自体は概ね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度に引き続き、熱応力を受けて塑性化する柱・梁鋼部材および接合部を含む梁部材の加熱過程および冷却過程における曲げ座屈、局部座屈、接合部破断等の影響を含む力学的挙動を実験・有限要素解析の両面から明らかにする。 角形鋼柱、H形梁の加熱・冷却実験結果を踏まえ、平成25年度は、部材の再加熱実験による熱応力解放の程度について、実験的検討を実施する。解析的検討として有限要素による部材実験の再現解析の実施を行い、それとともに解析モデルの改良を行う。それにより、当該部材が建築物に内在する場合の火災応答解析を可能とし、パラメトリック解析を実施する。 また、一連の実験・解析結果に基づき、部材の挙動を定式化するための構造モデルの構築し、部材の構造特性、荷重条件、加熱・冷却条件等に応じた、部材の再使用限界温度、最大塑性変形量を推定するための理論的検討を進める。また、部材の再使用限界温度を理論的に推定する手法の構築を試みる。部材の再使用限界温度推定法を架構に対して適用し、解析結果と比較することにより、その妥当性を検証する。さらに、現在の耐火設計において、支持条件・荷重条件、限界状態等の点で、十分な性能整合のとれていない再使用限界温度、耐火試験における崩壊温度と耐火設計指針に基づく架構の崩壊温度の関係を相互に換算するための理論的分析を行い、とりまとめる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、研究費の大半を試験体作製費用・実験消耗品・実験測定器等に充当する。試験体の発注時期は年度中頃を予定している。 謝金については計上しない。 旅費は主として、国内の移動費である。
|
Research Products
(4 results)