2011 Fiscal Year Research-status Report
分光と輝度の分布を考慮した視環境評価メカニズムの解明
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23760553
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
望月 悦子 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (80458629)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 分光分布 / 被験者実験 / S錐体 / 色知覚 / 高齢者 / 色覚障がい者 |
Research Abstract |
近年、LEDや有機ELなど、従来一般照明に使用されてきた光源とは分光分布の大きく異なる光源も一般照明として使用されるようになってきた。一般照明用LEDは、青色LEDに黄色蛍光体を用いて白色化したものが現在は主流であるが、現行の測光量は明所視における目の分光視感効率に基づいており、短波長域に対する視細胞(S錐体)の感度は考慮されていない。S錐体は中心窩にはほとんど存在しないが、周辺視の視知覚に寄与することが示唆されている。LEDのような指向性が強く、短波長成分が相対的に多い光源については、人間の目と光源の位置関係によって、従来の測光量に基づく方法では評価しきれない可能性がある。そこで本研究では、波長の異なる自発光物の周辺視における視認性について、目の順応状態を考慮し検討した。 実験には半球の視野装置を用いて、11箇所の開口部を設け、開口部から波長プログラマブル光源を用いて自発光刺激を呈示した。被験者は若齢者16名(色覚正常者10名、色覚障がい者6名、平均22歳)、高齢者5名(平均67歳)の計21名とした。被験者は昼白色蛍光ランプにより目の位置の鉛直面照度が200 lxで均一に照射された視野内を1分間注視した後、視野装置の開口部から呈示される自発光刺激の見えについて評価した。被験者には、視野内光環境3条件(明順応1条件、暗順応過渡2条件)と刺激呈示位置10条件、自発光刺激の輝度3条件の組み合わせのうち60条件に対し、自発光刺激の色5条件の見えを評価させた。刺激の呈示は2秒間とした。 結果、中心視では暗順応過渡過程における光色変化が視認性に与える影響は全被験者について有意でなかった。一方、周辺視では、刺激の呈示位置が視線からの偏角50°程度までは支障なく存在を知覚できるが、偏角40°以上になると色の判別が困難となった。また暗順応過渡状態では、緑よりも青の方が色知覚しやすかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23度は、単波長光に対する明所視ならびに薄明視におけるS錐体の分光視感効率を被験者実験により求めることを目的として実験計画を立てた。予定した実験内容は概ね遂行することができたが、当初予定していた実験条件数よりも実際に評価した条件数が少なかったこと、また高齢者と色覚障がい者の被験者数が少なかったことが課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、周辺視における自発光刺激の見えについて、被験者実験を行う。昨年度の実験では刺激の大きさを1条件としたが、今年度は刺激の大きさを複数条件用意し、異なる色光について等しい視認性を確保する等価な刺激の大きさを求める。これにより、異なる光色で等しい視認性を確保する刺激サイズの関係が明らかとなる。また今年度は、被験者を色覚が正常な若齢者に限定して20名以上募り、データの信頼性向上に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験装置は昨年度作成したものを流用する。装置の軽微な修正に必要な模型材料費と被験者実験の謝金に研究費を充当する予定である。
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