2011 Fiscal Year Research-status Report
昭和前期における「遊覧都市」の空間計画に関する研究
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23760565
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永瀬 節治 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (10593452)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 昭和前期 / 観光 / 都市計画 |
Research Abstract |
今年度は関連研究の整理を行うとともに、「遊覧都市」と見なされる都市の地形図、市街図や遊覧案内図等の収集を順次進め、昭和前期を中心とした「遊覧都市」をめぐる全国的動向の把握につとめた。また大津都市計画について具体的検討を行い、計画過程や昭和前期の「遊覧都市」構想を取り巻く社会背景との関連について分析を行った。大津市が旧都市計画法の適用を受ける1927年以降、周辺町村を含む都市計画の策定と市町村合併が密接な関連を有し、「遊覧都市」を掲げる都市像にも曲折が見られたこと、また天智天皇の大津宮に遡る旧都を拠り所とし、近江神宮(1940年創建)の造営を推進する動きとの関連についても明らかとなった。さらに傅舒蘭氏(東京大学都市工学専攻博士課程)の協力のもと、中国・杭州の近代都市計画との比較研究を行った。杭州市は西湖に臨む歴史的資源の豊富な観光都市であり、大津市と立地条件に共通性があること、さらに1910年代から1930年代に近代都市計画の導入と、遊覧・観光に関わる空間整備を行っていることから、東アジアの近代における観光と都市計画の状況を相対化する上で有用であると考え、検討を行った。杭州の近代都市計画の嚆矢は、1912年の旧満営の城壁の撤去と跡地利用による湖浜地区計画であり、これを機に西湖と都市が接続され、西洋式の湖浜公園も整備された。その後「西湖環湖道路計画(1920)」や「西湖博覧会(1929)」が実施されるなど、遊覧・観光客の誘致のための施策が活発化するが、これは大津における湖岸埋立と湖岸道路の整備(1936年~1942年)、琵琶湖周遊道路の完成(1936年)、第1回琵琶湖祭の開催(1935)に先行するものとして着目される。なお杭州については2011年度の日本都市計画学会『都市計画論文集』にて発表し、大津については同学会の一般研究論文集への投稿準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、「遊覧都市」としての性格を備えた国内主要都市の全体像の把握と対象都市の精査を行い、さらに大津市、奈良市を対象として具体的な検討を行う予定であったが、全国的な対象都市の精査については、現地図書館等でのある程度踏み込んだ資料収集を行う必要があり、継続的な調査が必要になる。大津市に関する資料収集と検討作業はほぼ完了し、都市計画論文集への投稿準備を進めているところである。一方、当初計画では組み込んでいなかった杭州についても、近代の遊覧都市を論じる上で、さらに大津市や今後調査予定の松江市といった湖岸の都市との比較を行う上で有用であると考え、比較対象として検討を行ったが、このために当初予定していた奈良市については、資料収集や現地での調査が十分に進められておらず、平成24年度に継続的に実施することとしている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度より研究代表者の所属研究機関が和歌山大学に移ることとなり、前年度に調査を進める予定であった奈良市については地理的に近く、これまで以上に資料収集が容易な状況となるため、年内に成果をまとめることは十分に可能であると考える。また戦前の「遊覧都市」をめぐる動向については、現在に至るまで第一の観光都市である京都、さらに前述の奈良を擁する近畿圏の状況を把握することの重要性が、大津市の調査を進める中で明らかとなっている。現在代表者が拠点とする和歌山市も、1931年に史蹟指定された和歌山城や、和歌浦の景勝地を擁し、遊覧都市化していた側面があり、研究対象に加えることを予定している。これらの個別事例の検討により、研究の4番目の目的として掲げている広域計画との関係、戦前の近畿地方計画における観光に関する議論への視座も明確化するものと考える。これらと並行しつつ、松江市・宮崎市の史料収集を、現地での調査も含めて順次進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、物品費については、前年度と同様に関連文献・資料の購入やデータ整理等のため、計240,000円を使用する。また旅費については、和歌山を起点とする現地調査のため、奈良(日帰り×4回)15,000円、松江(5泊6日×1回):88,000円、宮崎(5泊6日×1回):117,000円を想定し、さらに国立公文書館等での資料調査、研究協力者との打ち合わせ等のため、東京への旅費(2泊3日×3回)170,000円を含めた計390,000円を使用予定である。さらに人件費・謝金については、資料整理等への謝金(2人×6日)として88,000円、その他経費として、印刷・複写費として50,000円、研究成果(論文)投稿費として70,000円を使用予定であり、平成23年度の残額338,000円と平成24年度の申請額500,000円をあわせた838,000円を使用する計画である。
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Research Products
(2 results)