2013 Fiscal Year Annual Research Report
昭和前期における「遊覧都市」の空間計画に関する研究
Project/Area Number |
23760565
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
永瀬 節治 和歌山大学, 観光学部, 講師 (10593452)
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Keywords | 昭和前期 / 観光 / 都市計画 |
Research Abstract |
本年度は、遊覧都市の個別事例として、松江市、仙台市、和歌山市に関する空間計画・施策の検討を行った。いずれも大正後期から昭和初期にかけて旧都市計画法の適用を受け、商工業の振興による経済都市としての発展を指向しているが、各都市の有する観光資源の特性や立地条件等により、観光に関わる空間計画のあり方は異なる。宍道湖に臨む松江市においては小公園付きの湖岸道路の整備計画、仙台市においては東北産業博覧会を契機とした市電環状線等のインフラ整備が進められた。一方、城下町を基盤とする各都市では、いずれも城郭の公園化や関連資産の史蹟・国宝指定が行われている。さらに風致地区については、和歌山市においては和歌山城周辺や和歌浦等、市街地内外の景勝地に、仙台市においては市街地を取り巻く丘陵地等に指定され「森の都」の実態が保全されるなど、地域性に根ざした歴史的環境保全の萌芽がみられる。また各都市とも郊外に景勝地や社寺等を控え、昭和初期にかけて鉄軌道系の交通機関が開通していたのに加え、仙台周辺では松塩観光産業道路など、自動車によるアクセス道路の計画・整備も見られるようになった。 加えて、近畿地方計画における観光圏に関する観点についても検討を行った。その結果、当時の京都・奈良・大津等における都市計画道路や風致地区指定等に、広域的な交通網や緑地計画との関連が少なからず見出される点が明らかになった。 主要な「遊覧都市」の計画事例の全体的傾向として、社寺や城郭等の旧跡等の文化財指定や、自然景勝地等の風致地区指定により、都市内外の歴史的遺産と自然風景の観光資源化が進められ、それらを享受するための公園設置やアクセス道路等の基盤整備が計画されている。戦前期に実現した空間は限定的であるが、戦後にあらためて事業化される例もあり、そうした計画の連続性については更なる検討の余地がある。
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Research Products
(1 results)