2011 Fiscal Year Research-status Report
観光施策に基づく都市建設構想と都市基盤形成の近代的展開
Project/Area Number |
23760573
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 敬太 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80565531)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 近代都市計画 / 景観形成 / 国際観光 / 風致 / 遊覧都市 / 景勝地経営 |
Research Abstract |
本研究は、近代都市計画と観光施策に基づく都市形成が急速に進んだ大正・昭和初期において、観光を都市戦略として掲げ、景勝地開発および宣伝に取り組んだ都市を対象として、開発構想と都市基盤整備の具体的内容とその経緯、ならびに観光地のイメージ形成とその要因としての観光事業・戦略について明らかにすることを目的とする。 平成23年度中には、大正・昭和初期の神戸背山・六甲山を対象地として取り上げ、山地開発計画の立案過程と事業化の経緯と、それに対する風致保護論争について調査を重ねた。神戸の市街地と隣接する六甲山においては、大正初期頃から市民による登山が非常に盛んになるなど、国内においても山地でのレクリエーションが最も初期の段階に発達し、それにともない景観に対する評価も高まりをみせた。それに伴い、大正期から昭和初期にかけて住宅地開発や山林公園の建設、外客誘致のための観光地の開発など、神戸市を中心とする様々な主体による開発構想が活発に議論され、道路建設が進む。その一方、風致の維持や災害防止の観点から開発のあり方をめぐる活発な論争が起った。この過程の詳細を、行政資料や各種調査委員会の報告書、戦前の市会の議事録、新聞等を史料として用いて明らかにし、どういう主体(市会や市の理事者、技術者ら)が、どのような都市像を構想し、当時の事業ならびに制度の枠組みのなかで、どのように都市整備を行ったか(行おうとしたか)、という側面から考察した。本研究成果については、次年度に発表の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度中には、大正・昭和初期の神戸背山・六甲山を対象地として取り上げ、山地開発計画の立案過程と事業化の経緯と、それに対する風致保護論争について研究を重ねた。本研究成果については、第4回都市基盤史研究会(2012年1月21日(土)14時30分~18時00分)において「昭和初期の六甲山をめぐる開発と保護の顛末」と題して発表を行った。現在、学会発表論文の準備を行っており、草稿は概ね完成した。平成24年度中に発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は、大津および奈良・山の辺の道を研究対象として取り上げ、大津においては戦前の都市計画の実施過程と風致の保護施策について明らかにするよう研究を進める。山の辺の道については、史跡保存や行政や私鉄による観光施策との関連から観光地形成プロセスについて明らかにするよう研究を進める。両者とも、基本的な文献は既に収集しており、今後時間をかけて読み込んだ上で、論文の執筆を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初研究計画の通りである。文献資料やPC等の物品と、旅費(打ち合わせ、調査、資料収集)、論文の投稿料の使用が主となる。前年度までも、学会の他に研究会への参加回数が多く、その分の旅費が必要となる。専門家が集う研究会における議論は、研究の完成度向上には欠かせない。また、平成24年度に関しては、現在の論文執筆ペースからいって、論文の投稿料がやや大きくなる見込みである。
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