2012 Fiscal Year Research-status Report
観光施策に基づく都市建設構想と都市基盤形成の近代的展開
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23760573
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 敬太 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80565531)
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Keywords | 国際情報交換 / フランス / ドイツ |
Research Abstract |
本年度は、奈良「山辺の道」におけるルートの形成過程とその社会的背景、ならびに古代景観のイメージの発達とその特徴について明らかにした。具体的に明らかにした内容は以下の通りである。 ①「山の辺の道」の成立とその背景 明治から昭和にかけての名所めぐりの実態とその観光経路を、複数の観光案内記書や紀行文、旅行雑誌、地方誌等から明らかにし、「山の辺の道」のルートの形成過程を示した。また、「山の辺の道」について初めて詳細に記述した観光案内書『山の邊の道』(1941、関西急行鉄道)の成立背景について、主に奈良県と大阪電氣軌道(関西急行鉄道)による観光施策との関連から考察し、その意図と戦略について考察した。 ② 景観イメージの形成と景観保全施策への影響 『山の邊の道』(1941、関西急行鉄道)をはじめとして、観光案内書にみる風景記述分析を通じて、風景の構成要素とイメージと、そのイメージのルーツについて考察し、「山の辺の道」の景観と、古代のイメージ・歌のイメージとの結びつけ、および景観評価の発達過程について明らかにした。また、実際の景観保全、すなわち「山の辺風致地区」(1966-68)や歴史的風土(特別)保全地区(1967-68)等の指定や、国定公園(1970)・東海自然歩道(1973)の指定および整備における、「山の辺の道」の景観上の価値づけを整理した上で、都市計画関連の決定書類(国立公文書館所蔵)や歴史的風土審議会の議事録、『大和青垣国定公園計画調査報告書』(1971)等の行政書類等をもとに、「山辺の道」の景観保全・整備をめぐる景観保全思想を明らかにした。 本研究の成果の一部は、既に論文原稿を提出しており、平成25年度に発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度中には,平成23年度中に行った神戸背山・六甲山における産地開発計画の立案過程と事業化の経緯ならびに風致保護論争について論文執筆を進め、論文の成果を発表した。(山口敬太「昭和初期の神戸背山における開発と風致保護:山地開発論争と風致地区指定問題の顛末」建築学会計画系論文集,第77巻 第682号,P.2771-2780,2012) さらに奈良「山辺の道」の形成経緯についての資料収集と考察を進めた。本研究成果の一部は論文として既に執筆がほぼ完了している。現在論文審査中であり,発表は次年度に行う予定である。 平成24年度と25年度の実施計画に一部前後の変更があるものの本研究期間全体における研究の予定からみれば、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、大正・昭和初期の大津・琵琶湖沿岸における「遊覧都市」建設の構想と経緯を研究対象として取り上げ、資料収集と研究の進展に努める。 具体的には、大正期から昭和初期の大津市における「遊覧都市」建設を対象として、その構想の具体的内容と、琵琶湖の湖岸逍遥道路や史蹟名勝公園の建設、風致地区の指定を含む都市計画の審議・計画決定・建設の経緯について、都市計画滋賀地方委員会の審議録や、滋賀県・大津市の行政史料、大津市会議事録等を用いて明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、当初の研究計画に比べて、研究に関する打ち合わせを重視し、そのための旅費を多く計上している。そのほかは当初の研究計画の通りであり、文献資料やPC等の物品と、調査・資料収集のための旅費、論文の投稿料の使用に主に使用する。
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