2011 Fiscal Year Research-status Report
連携方式を導入した空き家活用型移住支援システムの評価とモデル構築
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23760577
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山本 幸子 山口大学, 理工学研究科, 助教 (30509526)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 地方自治体 / 空き家 / 改修費助成制度 / 専門機関連携 / 地域連携 |
Research Abstract |
平成23年度は、中国・四国・九州地方436自治体を対象に空き家情報提供に関するアンケート調査を行い、事業の実施状況と内容を整理した上で、登録制度導入及び専門機関との連携の有無によりシステムの類型化を行い、比較分析により既存システムからの展開内容を抽出した。 調査方法は、空き家情報提供事業実施が確認された166自治体を対象とした、事業内容に関するアンケート調査である。回収率は137/166(82.5%)、有効回答率は100%で、調査期間は2011年7月~12月である。本研究では回答の得られた137自治体のうち、自治体が運営主体である131自治体(95.6%)を分析対象とした。 その結果、1)2006年以降の平成の大合併を契機に事業を開始した自治体が半数を占め、中国地方の実施率が7割と高い。2)システムは登録制度及び専門機関連携の有無により4タイプに分類され、農村部では不動産業が未発達である背景から「登録制度」タイプが多く、人口規模が大きい程専門機関と連携する傾向が見られる。3)事業実施期間が5年以上且つ専門機関との連携によるシステム展開は、空き家登録数及び成約数の増加に一定の効果が得られていることが明らかになった。 今後の課題として、自治体の業務負担を軽減する上でも、調査や契約、改修に関する建築専門業務は専門機関に委託して自治体の業務負担を軽減しつつ、行政の信頼性の高さを活かし、窓口と総合的なコーディネートは自治体が担うといった役割分担が有効であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的のうち、平成23年度は、従来の情報提供型の事業方式から、「登録制度」や「専門機関連携」の導入による発展型の事業方式を見出し、既存の事業方式との相違点・展開内容を整理した上で、組織体制と事業内容の特徴を解明する目的は達成できた。一方、自治体の典型事例調査は4~5例程度を予定していたものの、本年は1例のみの実施となった。
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Strategy for Future Research Activity |
発展型空き家活用システムは下記3タイプに分類されるため、これら3タイプの先進事例を抽出し、自治体及び空き家活用住宅入居者への聞き取り調査よりシステムの有効性の検証を行い、その成果をもとにシステムモデルの構築を行う。1)登録制度を導入した発展型空き家活用システムの事例分析:山口県阿武町及び島根県飯南町を研究対象とする。農村地域の自治体においては、不動産業者が存在しない場合もあり専門機関との連携が難しいが、この2町は自治会や農家等の地域住民団体と連携し定住支援事業に取り組んでいる。よって自治体及び地域住民団体に対する聞き取り調査を実施し、連携内容と空き家活用との相乗効果を検証する。2)建築専門機関と連携し契約・改修支援を導入した発展型システムの事例分析:山口県萩市を研究対象とする。萩市では改修シミュレーション業務が建築士会に委託されている点に特色を持つ。よって空き家活用住宅入居者に対する聞き取り調査を実施し、建築専門家との関わり方、改修内容・コスト決定要因分析を行うとともに、住み方調査により不動産業者及び建築士が介入した場合の契約・改修内容の特徴を明らかにする。また不動産業者・建築士に対する聞き取りを行い、役割分担と連絡体制を整理にする。3)関連機関と連携し移住支援を導入した発展型システムの事例分析:島根県江津市及び鳥取県鳥取市を研究対象とする。両市は建築専門機関との連携に加え、空き家改修助成制度が導入されており、さらに自治会・NPO法人・大学・県等と積極的に連携し、各団体の専門技術や経験を活かした多様な移住支援メニューが用意されている点が特徴である。よって自治体及び空き家活用住宅入居者に対する聞き取り調査により、転入までの意思決定プロセスと、体験住宅・体験事業・就職支援の利用状況と評価を明らかにするとともに、住まい方調査により改修助成制度を適用した空き家改修の特徴を抽出する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、発展型空き家活用システムの典型事例を4~5自治体抽出し、自治体に対する聞き取り調査を実施するとともに、空き家活用住宅入居者に対する聞き取り調査を30例程度実施する。聞き取り調査は学生を含めて2名で行うこととし、旅費2500千円と、空き家実測調査図面の清書経費(15日×1人×8千円)、聞き取り調査資料整理経費(10日×1人×8千円)を必要とする。調査先は過疎農村地域が中心のため、交通の利便性が悪い場合にはレンタカーを借りる予定である。また、研究成果を日本建築学会支部大会及び全国大会、国際会議(アジア)にて発表する予定であり、主な費用は旅費である。また、調査記録機器として一眼レフデジタルカメラ・ビデオカメラ(各1台)、図面等のデータ作成資料として地図を必要とする他、調査資料・調査結果の郵送・返送のための切手代金及び封筒代金、広報用パンフレット作成費を必要とする。
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