2011 Fiscal Year Research-status Report
過疎地に所在する文化遺産の防犯環境設計の視点による実態把握とその課題
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23760580
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
永家 忠司 佐賀大学, 大学院工学系研究科, 産学官連携研究員 (00530205)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 防犯環境設計 / 文化財 / 空間形態 / 地域コミュニティ / サステイナビリティ |
Research Abstract |
文化遺産は地域アイデンティティの核となるものであり、社会全体で継承していく必要がある。これら文化遺産の保全・保護への対応が求められる現在、文化遺産の防犯性を検証すべきという問題意識から、本研究は周辺環境、コミュニティを含めた文化遺産を明らかにし、それら文化遺産の実態に応じた防犯性の課題について検討、提示することを目的としている。 実施初年度である平成23年度において、所在が明確な佐賀県内の指定有形文化財の情報を収集し、地理情報データベースに統合を行った。このデータベースを用いて、文化財が所在する場を分析対象として、その場が持つ空間的な特性を明らかにすることするために、アーバンフォームの要素である都市空間のレイアウトを捉える一手法であるMCA(Multiple Centrality Analysis)を用いて、道路ネットワークからみた文化財が持つ空間的特性を分析した。その結果、文化財が位置する場所について、MCAに係る3つの指標(Betweeness、Closeness、Straightness)を算出したが、文化財の全体的な空間的分布が道路ネットワークの特性に依拠する明確な傾向は覗えなかった.しかしながら、3つの指標を総合的に捉えると、Betweenessが文化財の場のタイプ形成に関わりがあった。つまり、周辺環境を含めた文化遺産について、関わりのある道路ネットワーク特性という都市空間特性を示したことで文化遺産に対し地域コミュニティがどのようにかかわるべきかを考えるための基礎資料を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は複数の過疎地において、文化遺産の所在とその管理の実態把握を行うために、文化遺産として指定有形文化財と市井の文化財についてGISを用いたデータベース作成を行う予定であったが、指定有形文化財のデータベース化はおおむね完了したものの、市井の文化財については調査が未完了である。 またこれらのデータベースを用いて、防犯環境設計に関連する都市空間特性の解明のために、文化遺産分布の分布特性の体系化からみた文化遺産の実態については明らかになったものの、地域コミュニティとの関係性の中で防犯上の課題を明示化するために、今年度は特に道路ネットワークからみたアクセシビリティを中心に都市空間特性を取り上げたが明確な課題まで言及するに至らなかった。 以上、現在までの達成度について、やや遅れているとした理由を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は九州北部、特に佐賀県内の過疎地を対象に研究を進めてきたが、平成24年度から研究代表者の所属研究機関が変更となったため、北海道道南地区の過疎地を新たに研究対象エリアとして加え研究を遂行する。 また平成24年度は指定を受けていない市井の文化財についての調査を地元自治会等を通じて行い文化遺産GISデータベースを深化させる。このデータベースを用いてマクロ的な都市特性との関係性から文化遺産の分布特性の体系を再定義し、標本調査および現地調査により文化遺産の周辺環境の把握を行い、周辺環境からみた所在状況の実態を明らかにする。 さらに文化遺産に対し、どのような主体がどのような関与の仕方をしているのかの実態と文化遺産の犯罪被害履歴を把握するため、文化遺産が所在するコミュニティに対し、文化遺産に対する管理・関与実態についてヒアリング調査およびアンケート調査を行う。この調査結果をもとに犯罪被害とコミュニティによる管理・関与実態から文化遺産を類型化することで、文化遺産の周辺コミュニティが犯罪行動に与える影響について明らかにする。 以上を踏まえ、文化遺産の周辺コミュニティと都市空間特性の実態から防犯面の課題を体系化し提示する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度における研究費の主な用途として、現地調査におけるデータの作成のためにタブレットパソコンおよびGPS受信機を購入する。また現地調査及びデータのための作業人員が必要であるため作業補助のための謝金として使用する。 また、研究成果を学会等で報告する経費として旅費を、誌上発表するための経費として論文投稿料および英文校閲費に使用する。
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Research Products
(1 results)