2013 Fiscal Year Annual Research Report
合意形成構造に基づく住民参加の景観デザイン審査会の有効性
Project/Area Number |
23760584
|
Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
熊澤 貴之 岡山県立大学, デザイン学部, 准教授 (30364102)
|
Keywords | 合意形成 / 景観 / 景観保全 / 住民参加 / 協働 |
Research Abstract |
まず、ハムステッド・ガーデンサバーブ・トラストによる歴史的景観の保全を支える要因を明らかにするため、Suburb Newsという地域の情報誌の記事とトラストの会計報告書の内容を分析し、トラストとResidents Association(RA)からヒアリングした。その結果、歴史的環境の保全を支える要因は、独立した活動組織であること、トラストによる独自の調査分析機能とデザイン審査機能を持つこと、RAによるメディエーターとしての機能であることが明らかにされた。 次に、フランスのモントルイユ市Murs a Peches地区のアソシアシオンによる保全活動の評価を、文書や関係者からのヒアリング内容の分析に基づいて考察し、行政とアソシアシオンの関係に基づく合意形成プロセスを明らかにした。 その結果,次の4点が明らかになった。1)アソシアシオンと行政が協働する関係が構築されている時,合意形成に向けて平和的解決がとられる可能性が高いこと。2)アソシアシオンと行政が協働する関係が崩壊し,対局する関係である時,アソシアシオンのまちづくり運動は益々強まり,合意形成に向けて衝突的解決がとられる可能性が高いこと。3)アソシアシオンが専門的な技術支援を受け,具体案の構築ができる時,まちづくり運動は益々強まること。4)保全活動がアソシアシオンのメンバーの生きがいになっており,まちづくり運動の原動力になっていること。 これらの知見から、歴史的景観を保全するデザイン審査会は、独立した活動組織、独自の調査分析機能とデザイン審査機能といった専門的な機能、専門的な内容を住民にわかりやすく伝達するメディエーターという機能が必要であることが導かれた。その上、我が国おいてはアソシアシオンのような中間組織の育成と衝突的解決に対応できる制度が必要であることが導かれた。
|