2011 Fiscal Year Research-status Report
住宅アフォーダビリティ問題と家賃補助政策に関する研究
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23760594
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
式 王美子 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (10512725)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 住宅政策 / 家賃補助 / 貧困居住 / アフォーダビリティ |
Research Abstract |
本研究は、日本における住宅ストックとアフォーダビリティの住宅問題の実証的な把握と、国内外の低所得世帯を対象にした住宅政策における家賃補助政策論の分析を行う。3カ年の研究期間において、 (1)住宅アフォーダビリティと家賃補助政策に関する海外の文献調査、(2)ミクロデータを使用した住宅問題の実証研究、(3)国内の住宅政策や家賃補助政策に関する政策議論に関する分析、以上の3つの研究作業を行う予定である。初年度では、研究室の環境整備、資料収集・データ整備などの研究作業の基盤づくりを中心に行った。各作業の成果の概略は以下の通りである。(1)米国の文献を中心に、戦後から近年に到る住宅問題や住宅政策における議論の変化に関してレビューを行い、(2)の実証分析のための分析フレームワークを構築した。 (2)日本統計センターが所有する住宅個票データと、米国国勢調査や住宅個票データを使用し、日米の世帯が抱える住宅問題に関する分析を行った。データ分析の初歩的な結果をまとめ学術学会定例会で発表した。(3) 国内の住宅政策議論の分析に関しては、まず戦後から1990年代までの住宅問題の変化について文献調査を行った。近年の公営住宅管理戸数の減少の政策的背景や戦後住宅政策の最大の課題である木造密集市街地改良事業お動向について小論考をまとめ住宅研究会報誌で報告を行った。今後のヒアリング調査対象者の選出に向けて、居住貧困に関する研究会や政策集会に参加し情報収集を行い、ネットワークの形成に努めた。さらに昨年発生した東日本大震災を受けて昨年度急速に普及した民間賃貸住宅借り上げ制度と家賃補助政策の関係についても調査を行った。遠隔地避難者への受け入れた自治体担当者へのヒアリング調査や資料を通して情報収集を行い、京都市の事例に関しては報告書にまとめたほか、シンポジウムにて報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究当初に計画した(1)海外文献作業(2)実証分析(3)国内政策議論の分析の3つの研究作業を開始し、本年度は順調に研究基盤を整えることができた。震災の発生を受けて、(3)の研究作業において被災者居住支援のための既存住宅の活用について新たに情報収集を始めたこともあり、研究作業の(1)と(2)についての分析作業がやや遅れている。しかし今年度の研究作業により文献調査の下調べができたことやデータ整備状況が整ってきていることから、今後の研究においては作業効率の向上が見込まれ充分当初の研究目的には達成していけると思われる。 (1)(2)の研究作業と対照的に、(3)のヒアリング調査の準備に関しては、震災関連の調査等により人的ネットワークが広がったことにより、関係当初の計画よりも研究が進んでいる。そのため全体としては、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究を継続発展させながら、より緻密な分析を行っていく。まず、(1)の海外文献調査では、家賃補助政策が進んでいる米国の事例における政策議論についてさらに分析を進めるほか、英語で得られるヨーロッパ諸国の文献も収集・レビューしていくことにする。(2)住宅データの実証分析に関しては、家賃の高負担と居住水準という住宅困窮者の定義について精査し分析を行うとともに、全国消費実態調査の分析も加えることで持家世帯に関する分析を充実させる。また、日米の住宅データの比較も継続して行っていく。(3)国内の政策議論の分析に関しては、前年度に行った戦後の住宅政策の推移に関する文献調査に加えて、本年度は近年の家賃補助制度の議論の高まりの要因や経緯について新聞や既存文献を中心に情報収集をしていく。また、制度導入に関係する主要アクターの中から対象者を絞り、ヒアリング調査を開始する。ヒアリング調査では、今回の震災で初めて本格的に導入された被災者への既存住宅提供制度の普及が、平常時の家賃補助制度の導入議論にどのように影響しているのかについても調査していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)ソフトウェア・書籍の購入:世帯・住宅データの分析では主に統計ソフトのSAS・STATAを使用しており、引き続き年間ライセンス契約の更新やヴァージョンのアップグレードを行っていく。文献調査のために、住宅や貧困居住に関する国内外の論文・書籍を購入する。特に海外の文献に関しては、オンライン・ジャーナルを通して論文を購入する予定である。(2)謝礼:PC環境の整備や資料収集・データ分析などの研究作業の効率化を図るために、学部・大学院生を研究補助スタッフとして雇用する。謝礼は本学雇用規定に基づいて支出する。(3)旅費:政策議論に関する情報収集のための研究会や政策集会への参加、ヒアリング調査、研究成果発表のための学会出席などを目的として旅費を支出予定である。(4)その他:研究作業に関連する文具や印刷、PC消耗品などを購入予定である。
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Research Products
(3 results)