2014 Fiscal Year Research-status Report
住宅アフォーダビリティ問題と家賃補助政策に関する研究
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23760594
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
式 王美子 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (10512725)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 住宅政策 / 家賃補助 / アフォーダビリティ / 住居費負担 / 住宅問題 / 居住の貧困 / 低所得世帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本におけるアフォーダビリティに関わる住宅問題の実証的な把握と、低所得世帯に関する国内外の住宅政策における家賃補助政策論の分析を行う。研究期間に、(1)住宅アフォーダビリティと家賃補助政策に関する海外の文献調査、(2)ミクロデータを使用した住宅問題の実証分析、(3)国内の住宅政策や家賃補助政策に関する政策議論に関する分析、の3つの研究項目について研究を進める。平成26年度は、出産に伴い7月から9月にかけて休暇を取得したことから、復帰後研究期間を1年間延長するなど研究計画を見直し、次のような研究作業を実施した。 (1)海外の政策議論について、米国の文献に加えてヨーロッパにおける文献のレヴューに着手した。その結果、低所得世帯への住宅供給が公営住宅などのサプライサイドの供給方式から家賃補助などのデマンドサイドの方式に移行した背景には、戦後の住宅難の解消と住宅質の向上とともに公的住宅供給の減少し、それを補足する役割があったことがわかった。 (2)住宅土地統計調査の集計及び個票データを用いて、東京都と大阪府を対象に、家賃4万円未満の低家賃民営借家住宅の構造・建て方・設備がどのように変化したのか、また年収200万円未満の低所得世帯の居住携帯がどのように変化したのかを分析した。その結果、両地域において設備不良(浴室無し)住宅の減少により、低家賃住宅が大幅に減少していること、低所得世帯においては非木造住宅に居住する世帯が増え、その傾向は35歳以下の若年世帯、特に大阪府において顕著であることわかった。(1)(2)の研究をまとめ、学術大会において発表を行った。 (3)国内の政策議論の分析においては、自治体や低所得世帯のサポート組織へのヒアリングを行ったほか、社会保障住宅扶助に関する審議会資料の収集・整理、低所得世帯への居住支援に関わる集会に参加、専門家や事務者等の意見の収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前述のように年度途中での産休に伴い研究計画の見直しを行っている。 (1)国内外文献調査(2)データ分析(3)国内政策議論の分析の3つの研究作業について、修正後の研究計画に沿っておおむね順調に継続することができた。 (1)に関しては計画通りにヨーロッパ諸国の文献の分析を進めることができた。(2)に関しては住宅土地統計データの分析を行い、研究成果を学会に発表したほか、論文にまとめることができた。(3)の国内政策議論に関しては、過年度より行っているネットワーク構築により人脈が広がり、実際に政策形成に関連する組織にヒアリング調査をすることができ、また社会保障関係の資料も収集することができており研究は順調に進んでいる。そのため全体としては、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を1年延長し研究の最終年度となる平成27年度は、 (1)(2)(3)の文献調査やデータ分析について最終的な研究の位置づけや研究成果を整理し、研究全体の総括を行う。(1)(3)の国内外の家賃補助をめぐる政策議論の分析及び(2)の住宅データ分析の主な研究成果を論文にまとめ学術誌での発表を目指す。また、研究結果を見直し、研究の課題やさらに研究発展が見込まれる領域を考察し、今後の研究に向けての改善点や方向性を検討する。
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Causes of Carryover |
平成26年度は出産による休暇を取得したため研究期間の延長や研究作業の見直しを行ったため、結果として当該年度の研究作業が当初の計画よりも縮小したことにより「次年度に使用する予定の研究費」が発生している。産休復帰後の研究計画の見直しでは、平成26年度の研究費の変更を考慮した上で、平成27年度の研究費使用計画を作成している。具体的な使用用途は以下の通りである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
(1)書籍・文具の購入:文献調査のために、住宅や貧困居住に関する国内外の論文・書籍を購入する。特に海外の文献に関しては、オンライン・ジャーナルを通して論文を購入する予定である。文献整理やデータ分析に必要な文具やPC消耗品を購入予定である。(2)謝礼:PC環境の整備や資料収集・データ分析などの研究作業の効率化を図るために、学部・大学院生を研究補助スタッフとして雇用する。謝礼は本学雇用規定に基づいて支出する。(3)旅費:政策議論に関する情報収集のための研究会や政策集会への参加、ヒアリング調査、研究成果発表のための学会出席などを目的として旅費を使用予定である。(4)その他:研究に関連する学会等参加費、郵送や印刷費、PCライセンス購入費に使用予定である。
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Research Products
(4 results)