2012 Fiscal Year Research-status Report
互助組織を加えた高齢者住宅における生活支援サービスのあり方に関する研究
Project/Area Number |
23760595
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
山口 健太郎 近畿大学, 建築学部, 准教授 (60445046)
|
Keywords | 高齢者向け住宅 / 高齢者 / 生活支援 / ワークショップ / 互助 |
Research Abstract |
本研究では、サービス付き高齢者向け住宅における生活支援のあり方と互助機能の形成プロセスという2側面について明らかにすること目的としている。 前者については昨年度の結果を踏まえ、入居者の心理的安定には入居者同士の交流が重要と考え、入居者間の関係性を誘発する空間構成のあり方について検討を行った。具体的には食堂、セミプライベートスペース、玄関などの空間構成が異なる3つ高齢者向け住宅において行動観察調査を実施した。その結果、全ての共用空間が玄関付近に近接している共用空間近接型が利用者の滞在を誘発することや、建物内の動線の結節点に設けられたスペースが利用者の自然発生的な集まりを誘発することを明らかにした。 次に後者については、特徴的な事例を時系列的に調査し、互助組織が構築されていくプロセスを捉えていくことを予定している。事例については、既に運営されている住宅を部外者として調査するのではなく、研究者自らがアクションリサーチとして互助の醸成に関与していく形式を取る。本年度は、福岡県大牟田市で計画中のサービス付き高齢者向け住宅に対して介入調査を行い、職員の意識改善、または、地域住民との交流を促しやすい空間のあり方についてのワークショップを実施した。ワークショップは全4回実施し、KJ法やブレーンストーミング法などの手法を用い、サービス付き高齢者向け住宅の利用者像、生活のあり方、生活支援のあり方の抽出を行った。この結果については、運営者にフィードバックするとともに、計画しているサービス付き高齢者向け住宅の設計にも用いられており、具体的な改善にもつながっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は上記の研究実績に記載した通り2側面から構成されており、本年度は4年計画の2年目に該当する。第一の目的である高齢者住宅の生活支援のあり方については、昨年度から継続して調査を行い、食事サービスの付帯が入居者の自立性に及ぼす影響(1年目)や、共用空間の空間構成が入居者同士の交流様態に及ぼす影響について明らかにしてきた。研究計画に挙げた大半の事項についての調査が完了しており、おおむね計画通りに進んでいる。ただし、当初は認知症高齢者に対するサポートのあり方についての検討を計画していたが、実態調査の結果、自立高齢者も対象とした住宅において認知症に対して有効な支援を実施している住宅やケアハウスは殆ど見られないことがわかった。高齢者の生活の自立を踏まえた上で認知症高齢者の支援を実施してくためには、住宅内だけで完結するのではなく周辺地域住民も含めて関わっていく必要があり、その解決策については個別解にならざるをえないと考えている。この地域を含めての支援のあり方については、本研究の2番目の目的として挙げる部分であり、これらの研究の中で検討していきたいと考えている。 この2番目の研究目的である互助組織の形成プロセスについては、当初の研究計画では3年目(H25年度)から実施する予定であったが、調査対象として計画している事例の進行状況が予定よりも早まったためにH24年度から調査を実施している。調査の進行状況については順調であり、1年計画が早まることにより長期間にわたり活動を継続的にとらえることができるようになった。 また、研究計画が繰り上がったことにより、前半部分の研究の整理や学術論文への投稿が計画よりも若干遅れている。H25年度は継続して研究を進めていくともに研究成果の発表に注力したいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の現在までの達成度に記載した通り、研究は順調に進行しており第一番目の目的の大半を果たすことができた。H25年度は、まずこれまでの研究成果を整理し早急に学術論文等への発表を行っていきたい。 次にH25年度に計画していた住民の互助組織を加えた高齢者向け住宅のあり方については、予定通り研究を遂行していきたいと考えている。具体的には、昨年度ワークショップを実施した現在計画中の高齢者向け住宅を対象に、H25年度は住民参加型のワークショップを行い、積極的に地域住民を住宅に呼び込む活動を実施してきたいと考えている。また、計画している住宅がH25年度中には竣工することから、竣工後の活動についても捉えていきたいと考えている。 今後の課題としては、このような研究者の介入を伴う事例研究を客観化していく方法論についての文献調査を行い、得られた結果を実際に応用していきたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|