2012 Fiscal Year Research-status Report
福祉施設における生活の質の向上を目的とした環境診療に関する研究
Project/Area Number |
23760598
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Research Institution | Toyota National College of Technology |
Principal Investigator |
加藤 悠介 豊田工業高等専門学校, 建築学科, 講師 (80455138)
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Keywords | アクションリサーチ / 福祉施設 / 児童養護施設 / デイサービスセンター / 老人保健施設 |
Research Abstract |
本研究では、3つの福祉施設において、利用者のQOL向上に寄与するケア環境を実現するために、研究活動と実践活動が一体化したアクションリサーチの考え方にもとづいた環境診療を行うことを目的としている。具体的には、新設の高齢者デイサービスセンター(以下、DSと略す)、開設後10年以上を経た老人保健施設、移転建て替えを行った児童養護施設を対象とした。平成24年度は、DSと児童養護施設において研究活動を行った。 DSは、地域に開かれた空間構成であることから、地域住民がDSを使いこなしていく過程を捉えることを目的に、シート記録調査と行動観察調査、DSのスタッフへのインタビュー調査を行った。その結果、1)施設への来訪回数は増加傾向にあり、なかでも地域住民がボランティアとして定期的に利用していること、2)来訪者の利用場面を整理すると、1対1で高齢者と落ち着いて過ごせる小さな空間や、複数の高齢者と一緒に活動できるデッキのような広い空間があることで、地域住民が気軽に立ち寄れる施設環境となること、3)NPOなどに貸し出すことのできる空間がある場合、DSとNPOの関係を調整する第3の組織が運営上必要であり、この組織があることで地域へのなじみも促進されることがわかった。 児童養護施設では、利用頻度の少なかった共用空間を対象として、簡単な模様替えを子どもと協働でのワークショップを実践し、その前後の行動変化から子どもが滞在しやすい環境づくりの効果を検証した。調査は模様替え前後に平日と休日の一日ずつ計4日間、行動観察調査を行った。その結果、1)小学生と中学生の積極的なコミュニケーションが増加したこと、2)高校生がひとりで過ごすことが増えたことが明らかとなり、ワークショップにもとづく模様替えを行うことで、子どもが滞在様態を選択しやすい空間になることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、3つの福祉施設においてアクションリサーチを実践し、それぞれの現場の状況に応じてQOL向上に寄与する環境診療の手法を確立することである。 平成24年度は対象となる3つの施設のうち、2施設(高齢者デイサービスセンターと児童養護施設)で本格的な調査を実施した。とくに、児童養護施設では、居住者の子どもの視点に配慮した模様替えの実践とその効果を検証するとすることができ、当事者のための環境診療を考える上で意義ある知見を得ることができた。 しかし、残りの1施設(老人保健施設)では、調査を行うことができていない。これは、基礎的作業である高齢者居住施設における環境づくり指針の整理が、当初の予定より複雑な内容となったためで、調査段階には至らなかった。 調査を実施できていない施設も準備は整いつつあることから、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、高齢者デイサービスセンターおよび児童養護施設においては、これまでの調査結果にもとづき、多角的な分析を進め、それぞれの施設へのフィードバックを行う。さらにそれらの知見をスタッフなどと議論した上で、必要であれば再度アクションリサーチを行う。 老人保健施設においては、環境づくり指針にそって、スタッフによる家具や小物レベルの環境的工夫を収集整理し、それらをデータベース化する。そして、スタッフでも環境診療が手軽にできるツールを開発する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の調査研究を実施するにあたり、研究費を、(1)研究関連資料の購入、(2)環境づくりツールの開発のための機器の購入、(3)先進的な福祉施設への見学や福祉施設の動向に関する研修参加に伴う旅費に使用する計画である。なお、申請当時に設定した予定から大きな変更はない。
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Research Products
(4 results)