2012 Fiscal Year Research-status Report
古代地中海世界のヘレニズム期の複合墓・墳墓の地域性と時代性に関する研究
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23760601
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
武田 明純 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00344549)
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Keywords | 墳墓 / 複合墓 / 墓 / 古代ギリシア建築 / ヘレニズム / ギリシア / トルコ / 西洋建築史 |
Research Abstract |
本研究の目的は、古代地中海世界のヘレニズム期の墓の体系化に向けて、建築形態、建築技術、造型理念の観点から、墳墓・複合墓の地域性や時代性を明らかにすることにある。これに向けて、平成24年度は、研究対象をトルコの墳墓・複合墓とし、「建築形態の比較」、「建築技術の比較」、「設計法の検討」を行った。 建築形態の比較研究では、ヘレニズムの墳墓・複合墓調査報告書等の資料の分析、及び現地での視察を通して、墳墓・複合墓の形態的特徴を整理し、各時代、各地域について比較検討を行った。これにより、複合墓はトルコには数が少なく、現在までに発掘、報告が行われている正式な複合墓はカシュの墓廟のみであることがわかった。また、エフェソスのベレヴィ・マウソレウムも一種の複合墓と言えなくもないが、こちらは墓の下部に位置する墓室のみが岩を削って造った磨崖墓部分で、その上に家型墓が載ったものとなっている。従って、その主たる部分、及び見た目は家型墓となっている。一方、墳墓においては、墓室に対する工夫が目立っていた。つまり、墳墓は盛り土をし、その中に墓室を持つものが大半であるが、墓室が盛り土の土圧によって潰されないよう、その天井形式に工夫がみられた。また、墓室の外側に、墓室を囲うように別の部屋が構成され、墓室が墳墓の土圧で墓室がつぶれないような工夫がなされたもの等もあった。今後、構造的視点から検討を行い、古代人の構造に対する意識を明らかにする予定である。また、大抵の場合、古代ギリシア建築では、設計法はファサードなどの優れた形態を如何にして生み出したのかを分析するものが多い。墳墓の場合は、墓室と盛り土との関係をどのように設計したのかを分析する必要があるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トルコ地域の墳墓・複合墓の形態的特徴を把握し、構造的観点からの分析が有用であることが確認されたため、研究は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、調査地域を地中海の南部地域(エジプト等)に拡大し、その墳墓や複合墓の建築的特徴を把握する。また、これまで調査を行って来た、地中海北部や東部地域の墳墓や磨崖墓との比較を行って、地中海世界の中での各地域の墳墓・複合墓の形態的特徴を明らかにする。また、前述の通り、墳墓においては、構造的観点から墓室部分の分析を行うことが有用だと考えられる。よって、今後は有限要素法解析プログラムを使用して墳墓の墓室の構造解析を行い、古代人の構造に対する意識について考察を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、地中海の南部地域に着目して、その墳墓や複合墓の建築的特徴の把握を行う。この中で、エジプトの視察調査のための旅費、視察調査における写真資料作成のためのデジタルカメラのバッテリー、メモリーカード、広角カメラレンズの購入費用、地中海南部地域で発掘された墳墓や複合墓の調査報告書等の文献購入費が必要とされる。前年度繰越金は、文献購入費用として使用する。
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