2012 Fiscal Year Research-status Report
17世紀ヴェネツィアにおける公衆オペラ劇場誕生の経緯とその実態
Project/Area Number |
23760603
|
Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
青木 香代子 東京芸術大学, 大学院美術研究科, 専門研究員 (00597065)
|
Keywords | ヴェネツィア |
Research Abstract |
当該年度は、最初の公共オペラ劇場であるテアトロ・サン・カッシアーノに先駆けてヴェネツィアに建設された2つの劇場テアトロ・サン・モイゼとテアトロ・サン・サルヴァトーレの実態を明らかにするための調査・研究を行った。 2013年2月の現地調査では、ヴェネツィア市立ゴルドーニの家演劇博物館内の図書室に保管されている未公刊の一次史料「ヴェンドラミン文書」の調査によって、テアトロ・サン・モイゼとテアトロ・サン・サルヴァトーレ、さらにテアトロ・サン・カッシアーノのいずれもが、グリマーニ家というヴェネツィアの名門貴族による介入を受けていたことを解明した。またこのことから、次年度以降、グリマーニ家と彼らが17世紀末までに建設した3つの劇場の実態を明らかにすることが、17世紀ヴェネツィアの劇場の発展と変容の全貌を解明するうえで重要であることを確信した。 また、同様の調査から、テアトロ・サン・カッシアーノ開場の前年にパドヴァのプラート・デッラ・ヴァッレで行われたオペラ「エルミオーナ」の上演が、のちのヴェネツィアにおけるオペラと劇場建設の流行にもつながった可能性があることが明らかになった。これに関しては、パドヴァでの上演を組織したアッカデミア、招待されたヴェネツィア貴族などについて引き続き詳細な調査と分析行う必要がある。 当該年度に実施した調査・研究によって、本研究全体の基盤が確立された。また、平成25年度、26年度における研究の明確な方向付けをするうえでも意義のあるものとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は当初の研究実施計画どおりオペラの上演が有料上演を行う常設空間へと移行していく過程について明確にすべく、一次史料の収集、文献・資料の調査・分析を行った。しかし、パドヴァでの上演に関しては、当初、当該年度に調査・研究を完了する予定であったが、想定していた以上に17世紀ヴェネツィアにおけるオペラ劇場の誕生と発展に大きな影響を与えた可能性があるため、本年度も継続して研究を行う必要がある。 しかし、グリマーニ家の関与など、次年度以降の課題にもすでに着手しつつあることから、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は2度の現地調査を行う。第一回目では主にパドヴァでのオペラ上演とヴェネツィアでのオペラ劇場誕生に関して、関連する史料の収集ならびに現地調査を行う。 第二回目の調査ではグリマーニ家と彼らが所有した3つの劇場について、主にヴェネツィア国立古文書館における調査を行う。また、グリマーニ家がマントヴァのゴンザーガ家とも深く結びついていたことから、マントヴァにおける調査も行う予定である。 最終年度である来年度は研究の最終段階として全体を統合するために必要な資料の収集と調査を行い、報告書を作成する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はヴェネツィアだけではなく、パドヴァ、マントヴァなどにも滞在する。また3度の国内出張(学会参加)を予定しているため、研究費の大半を旅費にあてる。残りは物品費とくに書籍・資料、電子辞書の購入等に充当させる予定である。
|
Research Products
(3 results)