2013 Fiscal Year Research-status Report
17世紀ヴェネツィアにおける公衆オペラ劇場誕生の経緯とその実態
Project/Area Number |
23760603
|
Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
青木 香代子 東京藝術大学, 美術学部, 大学院専門研究員 (00597065)
|
Keywords | ヴェネツィア / 劇場 |
Research Abstract |
当該年度は、1637年、ヴェネツィアで最初の公共オペラ劇場として開場したテアトロ・サン・カッシアーノの実態を明らかにするため、その前年にあたる1636年にパドヴァでおこなわれた「エルミオーナ」上演に着目し、その実態と相互の関連について研究を行った。9月と3月にはヴェネツィア国立古文書館、パドヴァ市立図書館などにおける史料収集と現地調査を実施した。そのひとつの成果として、「エルミオーナ」上演の公式記録から、役者、音楽家、舞台背景作家など多くの人物が双方の上演に関わっていた事実を明らかにすることができた。さらに、テアトロ・サン・カッシアーノの開場だけでなく「エルミオーナ」上演に関わった役者のなかには、17世紀半ば以降にヴェネツィアで建設されたオペラ劇場の経営に携わった者の存在も確認した。これにより、パドヴァでの「エルミオーナ」上演は、テアトロ・サン・カッシアーノの開場だけではなく、17世紀ヴェネツィアの劇場全体に多大な影響を及ぼしたことを明確化することができた。 さらに、「エルミオーナ」上演の主催者と舞台背景作家、役者の多くは、それに先駆けた1630年代のモデナ、ボローニャでの上演にも関わっていたことが明らかになった。以上のことから、次年度の課題として、17世紀ヴェネツィアの劇場の発展に多大な影響力をもった「エルミオーナ」上演の実態と特にその空間的特質を明らかにするため、モデナやボローニャでの上演についても調査する必要性が浮き彫りになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は当初の研究実施計画に基づき、17世紀ヴェネツィアにおける劇場建築の誕生と発展に1636年のパドヴァにおける「エルミオーナ」上演がどのような影響を及ぼしたかについて調査・研究を進めた。2度にわたる現地調査で入手した資料を基に、上演形態や内容における相互の関連性を示すことができたことから、本研究はおおむね順調に進展しているということができる。 一方で、劇場建築の空間的特質に関しては引き続き研究を進めていく必要があることが明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、まず1636年の「エルミオーナ」上演の空間的特質について、ボローニャやモデナでの上演に関する資料を収集しながら明確化する。次に視点をヴェネツィアに戻し、1636年以前・以後に建設された劇場の特質を比較しつつ、ヴェネツィアの劇場が上演形態や内容だけでなく空間的特質においても「エルミオーナ」上演からうけた可能性について考察していく。 また研究の最終年度であることから、4年間の研究成果を総括し報告書を作成する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度は調査をすべて研究代表者が単独で行ったたため、人件費および謝金支出の必要がなかったことにより次年度使用額が生じた。 当該年度に見送った書籍の購入と、現地調査協力者への人件費または謝金として使用する計画である。
|