2011 Fiscal Year Research-status Report
モロッコにおけるアンリ・プロストの都市計画とアール・デコの建築に関する統合的研究
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23760606
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
三田村 哲哉 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (70381457)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | モロッコ / アンリ・プロスト / アール・デコ / カサブランカ / ラバト / マラケシュ / フェズ / メクネス |
Research Abstract |
今年度、本研究課題において実施した研究内容は次の2点である。第一は、パリのフランス建築協会20世紀資料センターほかにおいて収集した史料に基づいて、総督ユベール・リヨテ(Hubert LYAUTEY, 1854-1934)の命を受けたフランスの建築家・都市計画家レオン=アンリ・プロスト(Leon-Henri PROST, 1874-1959)が、1913年からアルベール・ラプラド(Albert LAPRADE, 1883-1978)らの若手建築家を率いて手がけたモロッコの5大歴史的都市のうちの商業都市カサブランカと首都ラバトの都市計画に関する考察である。第二は、1913年から1939年までの間にこれら両都市に建設されたアール・デコ様式の建築に関する実地調査と、モロッコ国立図書館において収集した史料、カサブランカ都市計画局と近代建築保存団体カサメモワールにおいて提供を受けた史料に基づいた文献調査である。 プロストはモロッコにおいて都市計画を手がけたことは既知の事実であるが、各都市にフランスから派遣された若手建築家が都市計画のみならず、中心地を形成するアール・デコ様式の建築を数多く手がけていること、イタリアの建築家が活躍していたことが明らかとなった。特にカサブランカの場合、数多くの秀逸なアール・デコの作品がメディナの南側に位置するある一地域に集中的に建設されており、プロストの都市計画に関する新たな一側面が明らかとなった。カサブランカという都市は、歴史都市と近代都市を共存させるために、こうした優れた都市設計のみならず、土地、人材、様式のマネージメントが不可欠であることを示唆している。さらに、こうした作品の一部が新たな都市開発による破壊の危機に瀕していることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の実施計画では、夏季休業期間と春季休業期間を利用して、パリの国立古文書館本館とフランス建築協会20世紀建築資料センター、ナントの外務省資料館において資料収集を実施するとともに、モロッコの5大歴史的都市のうちのカサブランカとラバトにおいて建築と都市に関する実地調査を実施することを検討していた。 昨年度実施した本研究の主な内容は、モロッコの5大歴史的都市のうちのカサブランカとラバトにおけるアール・デコの建築に関する実地調査と、カサブランカ都市計画局、近代建築保存団体カサメモワールにおける学術情報の収集、およびラバトにある国立図書館における資料収集、フランス建築協会20世紀建築資料センターにおける資料収集、ロンドンにおけるアンリ・プロストの作品の関する研究を実施している研究者からの学術情報の提供であった。 当初の計画に含まれているナントの外務省資料館における資料収集は翌年度以降に延期されるものの、ラバトの国立図書館における資料収集、新たな資料が保存されている可能性のある古文書館があることが明らかとなったこと、さらにロンドンにおいて提供を受けた学術情報は、研究の実施計画にはない新たな成果である。加えて、アンリ・プロストが晩年に手がけたイスタンブールの都市計画と建築に関する研究を遂行している研究者を紹介され、研究の新たな展開と発展が期待できる。 こうした点を総合的に勘案すると、研究計画の一部が未完に終わったものの、多数の新たな資料の入手、新学術情報の取得、研究の発展が見込まれる研究者の紹介などの数々の成果を挙げており、本研究における現在までの到達度は、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度、本研究において実施した主な研究内容は、次の通りである。モロッコにおけるアンリ・プロストの都市計画とアール・デコの建築に関する研究を遂行するため、第一にパリのフランス建築協会20世紀資料センターにおけるアンリ・プロストの都市計画に関する資料の収集、第二にモロッコの5大歴史的都市のうちの商業都市カサブランカと首都ラバトにおけるアール・デコの建築に関する実地調査および情報収集、第三にラバトの国立図書館における資料収集である。こうした一連の学術情報に基づいて建築と都市に関する考察を遂行している。 昨年度の研究調査で明らかになったことのうち、今後の研究促進のために有効な学術情報は、ラバトにある国立図書館および古文書館に、モロッコにおけるアンリ・プロストの都市計画とアール・デコの建築に関する資料が収蔵されている可能性があることである。こうした点を考慮して、当初の研究計画の一部を変更し、再度ラバトにおける資料収集を検討している。 したがって、本年度の研究計画は、休業期間を利用して、パリの国立古文書館およびフランス建築協会21世紀建築資料センターにおける資料収集、エクス=アン=プロヴァンスの国立古文書館分館における資料収集を実施するとともに、モロッコにおける資料収集と実地調査を行う予定である。本年度、研究対象とする都市はフェズとメクネスであり、都市計画に関する文献調査を実施した上で、実地調査に臨む予定である。加えて、再度ラバトの国立図書館において文献調査を行うことも検討している。 今年度の調査は、昨年度の調査に倣って実施するものであり、本研究の成果は社会還元される予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度執行した主な研究費は、夏季休業期間を利用してモロッコの商業都市カサブランカと首都ラバトにおける実地調査と文献収集を行うための旅費と、12月にパリにおける資料収集とロンドンにおける学術情報の収集のための旅費である。ロンドンにおいて学術情報の提供を受けたのは、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンにおいて、アンリ・プロストが手がけたキリスト教およびイスラム教が共存する地中海都市の近代化に関する考察を主題とした研究者からである。 昨年度実施した調査においてモロッコの国立図書館および古文書館には、本研究において必要となる史料が保存されている可能性があることがわかった。したがって、昨年度の研究方針に加えて、これらの図書館と古文書館における資料収集が必要となる。 こうした成果を踏まえた上で、今年度の研究費の使用計画の第一に上げられるのは、旅費である。旅費は、パリにおいては国立古文書館およびフランス建築協会20世紀建築資料センターにおける資料の収集、およびモロッコ5大都市のうちのフェズとメクネスにおける都市計画およびアール・デコの建築に関する実地調査のためのものが主となる予定である。 本研究ではプロストが描いた大型の図面の撮影が不可欠であり、また実地調査では建築作品の撮影を繰り返し行う。撮影機材の老朽化が著しく、今年度こうした一式の機材の更新も検討している。機材の更新は、夏季に予定している出張の前に実施する予定である。エクス=アン=プロヴァンスの国立古文書館分館における資料収集は、可能な限り遂行する予定である。 最後に、次年度使用額(B-A)が生じた理由は、交付決定の際に、本研究に必要な機材の更新を検討したが、その機材の発売が延期となったため、購入費用に必要と思われる381,203円を次年度に使用することにした。
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