2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23760615
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
倉方 俊輔 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30597224)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 建築史・意匠 / 日本史 |
Research Abstract |
対馬(長崎県対馬市)は九州の北方、玄界灘にあり、長崎県と朝鮮半島の中間に位置する島である。古くから交通・貿易・国防の要地として重視され、近代に入ってそうした性格は一層強まった。しかしながら、近世以前の形態を色濃く残す民家・集落等に関する研究が深められている反面、幕末以降の近代建築に関しては基礎的な所在確認も実施されていない。本研究は2年間で対馬全域の近代建築の悉皆調査を行い、文献調査と併せて、その全容を把握する。これによって、社会的背景に根ざした対馬の近代建築の地域的特質を明らかにし、地域資源としての認識に資することを目的とする。平成23年度は、対馬の近代建築の全容を把握し、社会的背景に根ざした地域的特質を解明するために、(1)全島の悉皆調査、(2)厳原市内の煉瓦造構造物の悉皆調査、(3)鰐浦のコヤの近代的変容の実地調査の3つを現地で進め、これに並行して、東京・広島などにおいて、関連資料の収集と分析を行った。(1)に関しては、対馬市上対馬地区(旧上対馬町)の19集落と上県地区(旧上県町)の22集落、計41集落を対象に現地で7日間の日程で悉皆調査を実施し、34棟の近代構造物の存在を背景と共に示した。(2)に関しては、現地調査によって全部で77件の煉瓦造構築物が厳原市街地に存在することを明らかにし、資料と聞き取りから、これらと明治10年代に建設された煉瓦造構築物である厳原監獄ならびに江口合名工場との関係を示すと共に、地域的特徴を分析した。(3)に関しては、対馬北部の鰐浦のコヤの現状を実測し、近代の地図・地積図と照らし合わせてその分布の変容を示し、それとコヤの意匠・構法的特徴との連関を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目的は、交付申請書に書いた通り、「社会的背景に根ざした対馬の近代建築の地域的特質を明らかにし、地域資源としての認識に資すること」にある。当初は専ら対馬全域の近代建築の悉皆調査によって、それを達成する予定であった。しかし、最初の現地調査で得た知見を検討した結果、より細かに近代の変容が現れている存在として〈厳原市内の煉瓦造構造物〉と〈鰐浦のコヤ〉の2つを対象に加えることにした。現地調査と文献資料の双方によって、今まで描かれなかったその近代史を描き出すことになる。これと、当初から目的としていた広範な悉皆調査をあわせることで、対馬の近代建築の地域的特色を明らかにする計画はより進展したものと捉えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、まず対馬全島の悉皆調査の未踏査地域である峰地区・豊玉地区・美津島地区・厳原地区を探査する。次いで、近代の変容が現れているトピックとして、龍造寺分家をはじめとする〈伝統的民家の近代的展開〉を捉え、対象選定と実測調査ならびに資料調査を実施する。最後に悉皆調査の中で特に重要と考えられ、所有者の同意が得られた3~4物件程度について、現地で7日間の日程で実測調査と資料調査を実施する。その際に資料の補足調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の申請通り、現地調査や資料調査の旅費、レンタカー代を中心に使用する計画である。
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