2011 Fiscal Year Research-status Report
局在構造計測による炭素系ワイドギャップ半導体の電極界面構造と電流輸送特性の相関
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23760622
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
着本 享 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 講師 (50346087)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 界面 / 電流輸送 / 半導体 / 原子構造 |
Research Abstract |
現行のシリコン半導体デバイスは、半導体特性に起因して理論限界値に近づいており次世代型の高速化や高出力化が困難になりつつある。次世代デバイス用半導体として、耐熱性に優れたワイドバンドギャップ炭素系半導体である炭化珪素(SiC)やダイヤモンドが注目されている。炭素系半導体の次世代デバイス化に向けて、高い熱安定性を有する電極界面形成が要求される。本研究では、炭素系ワイドギャップ半導体について電極作製および特性評価を行い、さらに「原子分解能構造計測」と「原子緩和構造計算、電子状態計算、電流輸送計算」を組み合わせて学術的観点から電極界面における電流輸送の機構解明を目標とする。 初年度(平成23年度)は、SiC半導体における低抵抗電極材料の作製に向けて、電極界面における高温反応層形成と電気特性・微細組織構造との相関に着目した。まず、電極用金属材料は、半導体-金属界面に形成される反応層(炭化物やシリサイドなど)を熱力学的に予測して(SiCとの反応性が高い)遷移金属であるチタンをベースとした合金を選定した。p型SiC半導体に対してはチタン-アルミ合金を用いて高温反応により、界面における高いショットキー障壁の低減化つまり低抵抗電極の形成を可能にした。X線回折や透過電子顕微鏡による構造解析により、低抵抗電極内部においてチタン-シリコン-炭素で構成される三元系化合物層がSiC半導体上に形成していた。この化合物層は半導体との界面における整合性が高く、電流輸送に障害となる格子歪みや欠陥準位が少ないことも明らかとなった。さらには第一原理による界面緩和構造計算により、反応層と半導体との界面終端により原子結合状態および電子状態、ショットキー障壁が劇的に変化することも示唆され、原子レベルでの反応層(組織・構造)の制御が電極特性に大きく影響を及ぼす重要因子であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標は、炭素系半導体における電極形成および電極界面における電流輸送機構の学術的な解明である。初年度の炭化珪素半導体については、電極作製やその特性について各種計測技術により電流輸送に不可欠な要因が明らかになりつつある。炭化珪素については立案計画どおり研究進展がスムーズであり、次年度の目標である電極界面構造の原子構造・電子状態計測や理論モデル計算も前年度の実験データをベースに既に準備を始めており、最終目標とする実験と理論の両面から半導体-電極界面における電流輸送機構の学術的理解や解明、材料設計指針・プロセス構築に近づいている状況と言える。一方でダイアモンド半導体用電極材料については国内外での研究実績や様々な知見が極めて少なくチャレンジングな内容であるため、研究遂行にはいっそうの明確な研究方針の立案が必要であり時間を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究遂行において、共同利用許可を得ている東京大学やファインセラミックスセンターが保有する最先端の原子分解能走査透過電子顕微鏡技術を活用することで電極界面の原子構造計測や電子状態解析を行い、これまで収集してきた実験データをもとに炭化珪素半導体における電極形成(電流輸送機構)の学術的理解を目指していく。また、研究が順調に遂行している上記炭化珪素以外の半導体電極に対しては共同研究者とのいっそうの連携を図っていく。また、研究進捗度によっては、研究遂行に支障のない範囲で実験補助や他共同利用設備利用のために研究費を割り当て円滑に活用していくことにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度(初年度)は交付申請額に対して実支出額が若干下回り、次年度使用額(繰越金)が生じるにいたった。これは本助成研究開始の以前より所属機関経費等を用いて研究準備や予備実験を進めるために研究材料や機器用消耗品を事前調達してきた結果である。しかしながら、昨年度末にかけて新規調達分もあわせて材料や機器消耗品が不足してきており、最終年度である次年度の研究進展に支障がないよう研究環境整備のために上記繰越金を利用していく。これとは別に次年度の研究費は、交付申請内容どおりに研究材料や使用装置関連の消耗品の物品費を中心に支出計画である。また、最終年度は、昨年以上に対外での研究成果報告のための旅費および論文発表の経費も支出する予定である。
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