2011 Fiscal Year Research-status Report
ボロン正20面体クラスター固体への新たな手法によるホール注入と超伝導発現の探求
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23760625
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
兵藤 宏 東京理科大学, 基礎工学部, 助教 (30548863)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | デインターカレーション / ボロン正20面体クラスター固体 / 超伝導 / 電気化学 / ホールドープ / リチウム / インターカレーション |
Research Abstract |
β菱面体晶ボロン(β-B)は単体ボロンの最安定相であり、B12ボロン正20面体クラスターを構成要素とする巨大単位胞固体である。β-BにLi をドープすると、電子過剰を補償するために特定のサイトのB が脱離する自己補償が観測される。ここで、Li をドープしB を脱離させた後に電気化学的にLi をデドーピングすることができれば、過去の研究では成功したことがないβ-B へのホールドープを行うことができると考えられる。β-B は構成要素であるB 正20 面体クラスターの高い対称性に由来する特異なバンド構造を持つため、ホールドープによりキャリアを注入することができれば、高温超伝導の発現が期待できる。β-Bへの電子ドープに関する研究は盛んに行われているが、本研究が企図しているホールドーピングに成功した例はない。本研究の目的は、自己補償を利用したB-ICSs へのユニークなホール注入方法を開発することと、新規高温超伝導材料の探求を行うことである。本研究の主題である電気化学的Liデドーピングに関しては、試料のキャラクタリゼーションができていないため、デドーピングに成功しているかどうかはわからない。しかしながら、対称試料として熱処理、還元剤を用いてLiデドーピング試料を作製した。いずれの試料でもLiの脱離が観測されたが、熱処理によりデドーピングを行った試料では侵入型サイトのBの占有率がLiドープ前と同程度まで復活していたのに対し、還元剤を用いてデドーピングを行った試料では、侵入型サイトのBの占有率が変化していなかった。これより、還元剤を用いたデドーピングによりホールドープに成功したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電気化学的にLiデドーピングを行った試料のキャラクタリゼーション、物性測定ができていないことは当初の予定を達成できていない点であるが、還元剤を用いたLiデドーピングにより、ホールドープに成功した可能性がある点は研究目的の達成度に大きく貢献していると評価できる。還元剤を用いたLiデドーピングは当初予定していた実験内容ではないが、試料のキャラクタリゼーションが容易、均一なデドーピングが可能(電気化学的手法では表面1μm程度のみ)というメリットがあるため、目的達成に向けて今後精力的に実施するべき方法だと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度に達成できなかったデドープ試料の物性測定を重点的に行っていく予定である。粉末試料であること、焼結を行うことでホールドープが打ち消される可能性が高いことから電気伝導測定には成功していないが、バインダーの添加などによる試料の電気伝導測定法の確立を目指している。試料作製については、還元剤を用いたLiデドーピングを優先的に行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
電気化学の実験に関する装置、試薬は購入し終えたので、残りの予算は還元剤、溶媒の購入及び本研究成果を発表するための旅費、論文投稿費に充てる予定である。
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