2012 Fiscal Year Annual Research Report
原子クラスターの形態を制御した硫化物熱電材料の開発
Project/Area Number |
23760628
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
太田 道広 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 主任研究員 (50443172)
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Keywords | 金属物性 / 環境材料 / エネルギー材料 / 熱電変換 / 電子・熱物性 / 金属生産工学 / 廃熱利用 / 省エネルギー |
Research Abstract |
未利用のまま棄てられている膨大な量の熱エネルギーを有効利用できる技術として、熱電材料に大きな期待が集まっている。本研究では、モリブデン(Mo)と硫黄(S)から成る原子クラスターを基本構造として持つモリブデン硫化物に注目し、原子クラスターとその間に存在する空隙の形態を制御することで、優れた熱電特性を発現させることを目的とした。本年度は、カリウム(K)と銅(Cu)を空隙に充填したモリブデン硫化物の高品質焼結体を作製して、室温から800 Kの温度範囲で熱電特性を評価した。 昨年度開発したプロセスを用いて、①原子クラスターがつながったMo6S6一次元チェーンが基本構造のK3Mo6S6、②Mo6S8クラスターが基本構造のK1.1Mo6S8.2とCu4.0Mo6S8、③Mo9S11クラスターが基本構造のK2.15Mo9S11、④Mo6S8とMo9S11クラスターが基本構造のK1.85Mo15S19の単相で緻密な高品質焼結体の作製に成功した。優れた熱電材料には、低い格子熱伝導率と高い熱電出力因子が求められる。我々は、原子クラスターが基本構造のK1.1Mo6S8.2、Cu4.0Mo6S8、K2.15Mo9S11、K1.85Mo15S19の格子熱伝導率が、原子一次元チェーンが基本構造のK3Mo6S6のそれよりも低いことを見出した。さらに、同じMo6S8クラスターが基本構造のモリブデン硫化物において、Cu4.0Mo6S8の熱電出力因子が、K1.1Mo6S8.2のそれよりも高いことを明らかにした。これらの結果から、原子クラスターを基本構造に持ち、その間の空隙にはCuに代表される遷移金属が充填されていることが、熱電材料として相応しいモリブデン硫化物の形態であるという結論に至った。今後、本研究で得られた知見を基に、モリブデン硫化物の研究開発を加速することで、高い熱電性能指数が得られると期待される。
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