2012 Fiscal Year Research-status Report
プロトン伝導性酸化物における界面イオン伝導機構に関する研究
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23760629
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Research Institution | Japan Fine Ceramics Center |
Principal Investigator |
桑原 彰秀 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 研究員 (30378799)
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Keywords | 第一原理計算 / プロトン伝導体 / 界面 |
Research Abstract |
平成24年度は代表的なプロトン伝導体であるBaZrO3においてドナー型とアクセプター型の欠陥における会合対の形成エネルギーを計算し、単欠陥と複合欠陥の全てを考慮した欠陥平衡濃度の導出を行った。イオン伝導のキャリアであるプロトンを導入するためにYやScなどのアクセプター型のドーパントが添加される。しかし、低温においては導入されたプロトンのほとんどがアクセプター欠陥である添加元素と会合対を形成する。会合対は主要な欠陥種であり無視することはできないことが明らかになった。このような添加元素近傍にトラップされたプロトンは長距離拡散を必要とするイオン伝導には寄与できない不活性キャリアと考えられる。このためイオン伝導度の熱活性化エネルギーには移動エネルギーに加えて会合エネルギーも含まれる。高プロトン伝導体の創出には、こうした会合エネルギーの低減も必要と考えられる。 BaZrO3(001)-Pt(001)の電極-電解質整合界面モデルを構築し、その界面安定性や電子構造の詳細な解析を行った。電極界面近傍1nm程度のBaZrO3において価電子帯の主成分であるOの2p軌道とPtの5d軌道の混成によりバンドギャップが消失して金属的な電子構造になっていることが明らかとなった。界面近傍では、酸素空孔やプロトンは形成しやすいことも明らかとなった。 当初の計画には含まれていなかったが、第一原理計算による欠陥形成エネルギーの計算と熱力学に基づく欠陥平衡を考慮することで、TiO2における粒内、(110)表面における欠陥形成挙動の温度・分圧依存性を定量的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定には無かったが、会合対を考慮した熱平衡欠陥濃度の評価の結果、会合モデルは主要な欠陥種であり無視できないという重要な成果を得ることができた。イオン伝導体におけるキャリア濃度の定量評価において極めて有意義である。今後の界面モデルの平衡濃度モデルにおいても会合対を考慮する。Pt電極とBaZrO3電解質の界面モデルの計算により、金属-半導体界面では言われている金属誘起界面準位が形成されていること、電極電解質界面で欠陥が形成しやすい傾向にあることが明らかになり、異相界面に関する成果も十分に達成されている。また光触媒材料であるTiO2の粒内・表面におけるプロトン由来の欠陥生成に関する成果もまた有意義な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
BaZrO3の粒界モデルとしてΣ5対応粒界モデルを採用することを予定している。粒内における欠陥平衡反応から決定された主要な欠陥種群を選択し、界面でのカチオン元素の不定比性の可能性についても考慮した粒界における点欠陥形成エネルギーの計算、得られたエネルギーに基づく熱平衡濃度の導出とその気相分圧依存性を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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