2011 Fiscal Year Research-status Report
ナノスケール強誘電ドメイン構造に関するその場観察および原子配列直接観察
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23760632
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 幸生 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80581991)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 圧電体 / 強誘電体 / ドメイン / TEM / その場観察 / PMN-PT / MPB / 原子配列 |
Research Abstract |
本研究では高い圧電特性を示す単結晶材料として知られるPMN-PT(Pb(Mg1/3Ng2/3)O3-PbTiO3)について,特性発現機構についての知見を得ること目的として研究を行う.具体的には,(1)ドメイン構造の電界印加に対する応答をその場透過型電子顕微鏡法(TEM: Transmission Electron Microscopy)で直接観察すること,および(2)ナノドメイン内部での原子配列を直接観察することにより結晶構造に関する知見を得ることを主な目的とする.これまでに電圧を印加しながらドメイン構造を観察するその場TEM観察手法を確立しており,これを用いて実験を行った.実験の結果,PMN-PT中のドメインがある一定以上の電圧を印加することにより瞬時に応答することが分かった.応答はナノドメインおよびマイクロドメインの協調的な応答であり,方位の異なるナノドメインがその体積分率を再分配することに加えて,マイクロドメインのドメインウォールを移動させることで応答が起こる.加えて,これらの挙動が電圧の印加および開放に関して可逆的な応答であることが明らかとなった.(Sato et al, Phys. Rev. Lett., 2011.)これらの結果は過去に提唱されているメカニズムと大まかには一致しており,電界の印加下ではナノドメインの再分配が重要なメカニズムの1つであることが示唆される.一方,PMN-PT中のナノドメイン内に置いて高分解能走査透過型電子顕微鏡(STEM)観察を行った.環状明視野STEM法では陽イオン位置に加えて酸素イオン位置も明瞭に可視化することに成功した.現在,原子位置の解析を行っておりナノドメイン内の結晶構造が明らかとなれば,大きなブレークスルーとなる可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)電圧印加その場TEM観察および(2)原子分解能STEM観察共に非常に円滑に実験が進行し,(1)に関してはすでに上記に述べた大きな成果を挙げ,論文,解説記事,新聞記事が出版された.実験は現在も継続して行っており,これまでに分かっていた分極処理済みの結晶に関するドメイン応答に加えて,未処理の結晶に対してのドメインの挙動も明らかになってきており,これまでに得られていなかったドメインの動的な挙動に関する知見が次々と明らかになっている.(2)についても順調に実験が進行し,実験データは良好に得られたため,現在詳細な解析を行っている.当該分野に大きなインパクトを与える可能性がある結果と考えており,本年度中に成果のとりまとめを行い成果の公表を行いたい.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず,これまでに得られた原子分解能STEM観察結果の解析を重点的に行う予定である.得られたSTEM画像データから原子カラム位置の詳細な解析を画像解析法を駆使して行う.環状明視野STEM法により得られた陽イオン,酸素イオン位置のデータを精密に解析することによりこれまでには回折法などの平均的なデータから主に解析されてきた結晶構造の理解に新たな知見を与える可能性がある.また,電圧印加その場TEM観察法の実験は引き続き行う.継続してデータが得られており,先述の論文に続く第2報の報告を予定している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は重要な実験データが得られたため,まず成果のとりまとめを重点的に行い,論文等の発表を行った.そのため,購入予定であった実験用物品ならびに成果公表,情報収集のための学会発表を次年度以降に集中的に行うこととした.次年度は学会発表等の成果の公表を積極的に行う予定である.また,実験は継続して行うため物品等の購入を行う他,画像解析を行うためのコンピュータならびにソフトウェアの購入を行う予定である.
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Research Products
(10 results)