2011 Fiscal Year Research-status Report
組織配向制御した酸素透過性セラミックスの創製とその効果
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23760637
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
籠宮 功 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40318811)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 混合導電性酸化物 |
Research Abstract |
結晶異方性を有する酸素イオン-電子混合導電性酸化物の酸化物イオンの輸送しやすい結晶方位を明らかにし、その方位をそろえた高配向セラミックスを創製する。この配向制御が、酸素透過速度の活性化エネルギーに与える影響を調べ、より低温(800C)において酸素透過性の向上への寄与を明らかにすることが本研究の目的である。本年度は、酸素イオン-電子混合導電性酸化物として対象とする2つのSr-Fe系酸化物について以下のことを明らかにした。(1)SrFeO3-d単結晶試料をるつぼ徐冷法で作製した。この単結晶試料の酸素欠損量dは、ヨードメトリー法により0.255と求められた。このように高い酸素欠損量を示すことは、この系の大きい酸化物イオン拡散と相関があることを示している。以上を踏まえ、得られた単結晶について、単結晶X線回折により結晶構造解析を行った。この結果より、本試料は、ペロブスカイト構造において酸化物イオン欠陥が生じた系であり、斜方晶系の構造をとることを確認した。さらにより詳細に結晶構造、酸素欠損状態を調べることで、この試料における酸化物イオンの輸送しやすい経路について検討した。(2)正方晶層状ペロブスカイトSr-Fe系混合導電性酸化物について、単相の多結晶試料を作製した。得られた試料の粉末X線回折によるリートベルト解析および熱重量分析を行った。これらの結果を総合すると、本研究で注目する層状ペロブスカイトでは、単純ペロブスカイトの場合とは異なり、酸素欠損しやすい特定の酸化物イオンのサイトが存在することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Sr-Fe系酸化物における他元素の置換固溶効果について本年度において調査できていないが、一方で単結晶試料の作製についてすでに完了していて、次年度予定していたX線回折実験が一部進んでいることから、総合的には概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)本年度より得られた単結晶を用い、高温(約500℃)において中性子回折実験を行う。そのために、豪州の原子力研究施設(ANSTO)を訪問する。これより、酸化物イオンの欠損構造、非等方性原子変位パラメータを精密かつ正確に決め、非等方性原子変位パラメータの大きさから輸送しやすさを定量的に評価する。(2)Sr-Fe系斜方晶ペロブスカイト、層状ペロブスカイトを出発点とし、Sr, Feサイトについて、系統的に他の陽イオン置換固溶した無配向セラミックスを作製し、その酸素透過速度もしくはイオン導電率を評価する。これより系統的な陽イオン置換固溶によって、酸素透過速度もしくはイオン導電率の活性化エネルギーの系統的変化を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記今後の研究で示した精密なイオン導電率を測定する上で必要となる電流源を備品として購入予定である。その他消耗品として、試料作製、測定に必要な各種原材料、物品を購入するのに当てる。また、国内外での成果報告のために、旅費として使用する。
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