2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒーリング効果を利用した単結晶内部における高速イオンドーピング
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23760639
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
兼平 真悟 京都大学, 次世代低炭素ナノデバイス創製ハブ, 特定専門業務職員 (30437248)
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Keywords | サファイヤ / 金属 / 表面拡散 |
Research Abstract |
サファイヤを始めとする透明単結晶内部に、各種イオンを局所領域に高速ドーピングする技術開発を行う。フェムト秒レーザーを用いてナノクラックの形成方向を人工的に制御する技術と、熱処理によりクラックが元の単結晶に回復するクラックヒーリング現象を利用する。結晶表面には、ドーピングしたい薄膜等を塗布し、ヒーリング時に伴う表面拡散を利用して高速ドーピングを行う。クラックが消滅すると同時に、目的イオンがバルク表面から高速拡散を起こすため、本来絶縁体である単結晶に発光特性や導電性を付与でき、バルク全体の性質を大きく制御することができる。 r面を断面にもつ直方体状のサファイヤ単結晶(5×5×30 mm3)を試料として用い、フェムト秒レーザーを集光照射した。ちょうど断面を横切るような形で照射し、3mm程度のクラックラインを作製した。作製したサンプルは、大気中で加熱処理を行った。金属酸化物で作製したペレットにクラックを導入したサファイアサンプルを埋め込み、アニール処理でサクラック領域への金属イオンの拡散を試みた。金属酸化物は、Cr2O3、Ti2O3、CoOを選択した。アニール後、表面に残った金属酸化物をダイヤモンドスラリーで研磨し除去した。 偏光顕微鏡、ラマン分光器による測定の結果、サファイアの延性-脆性遷移温度である1300℃以上においてクラックヒーリングが促進されることが分かった。拡散処理を行ったサンプルについてEPMAを用いて元素分析を行った結果、Ti, Cr, Coのいずれにおいてもクラックに沿った金属イオンの拡散が確認され、表面からの内部への拡散深さは100μm程度であった。この値は格子拡散と比べると著しく大きなものであり、ヒーリング時に起こる表面拡散が高速な拡散の駆動力であると考えられる。また発光スペクトルを測定したところ、Ti3+、Cr3+に帰属されるピークが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に得られた結果を元に、これまで利用してこなかったr面を断面に持つサンプルを用いてクラックの形成を行い、金属イオンのドーピング処理を行った。r面に形成したクラックにおいても、良好な結果が得られた。Cr, Ti以外のCoを用いて同様の操作を行った結果、同じく高速拡散することが分かった。クラックヒーリングが多くのイオンドープの拡散に利用できるという結果が得られており、研究は順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
サファイヤのような結晶だけでなく、比較のためガラスのような非晶質材料に対してもクラックヒーリングの有無を確認する。現在までサファイヤの異なった面に対してクラックヒーリングの挙動について検討を加えてきたが、結晶構造の違いに関してはまだ理解が十分でない。また、ガラスの高温アニールにおける挙動がヒーリングに与える影響も調べることが可能であるため、本年度は非晶質材料へ対象を広げて研究を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
非晶質材料におけるヒーリング効果を確認するための、アルカリガラス、無アルカリガラス、溶融石英基板を購入する。そして、レーザー照射によりクラックを発生させた領域のアニールによる回復状態を確認する。又、クラック回復領域の表面状態を確認するため、外部の分析会社に依頼して表面分析を行うための費用に充足する。前年度に行った内容に関して論文としてまとめ、海外雑誌に投稿するための投稿費用と国際会議の参加費として使用する予定である。
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