2012 Fiscal Year Research-status Report
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23760640
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
大藤 弘明 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (80403864)
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Keywords | 六方晶ダイヤモンド / 高温高圧実験 / 物性測定 / 電子顕微鏡観察 |
Research Abstract |
炭素の準安定多形である六方晶ダイヤモンドは,最近の理論計算によって立方晶ダイヤを凌ぐ硬度と弾性特性を持つ可能性が示され,新しい硬質材料としても大きな注目を浴びている.本研究課題は,高温高圧実験によって炭素の準安定多形である六方晶ダイヤの純粋な焼結体を合成,減圧回収し,その物質科学的特性について多面的に評価することを目的とする. 平成24年度は,その前年度に行ったダイヤモンドアンビルセル実験の結果を踏まえて,主にマルチアンビル高圧装置を用いた実験を繰り返し行い,六方晶ダイヤの単相試料合成に必要な温度圧力条件を詳しく調べた.その結果,23~25GPaの圧力下において比較的低温条件(1100~1500℃)で出発物質のグラファイトの残留や(熱力学的な安定相である)立方晶ダイヤを含まない,六方晶ダイヤ単相からなるバルク焼結体を得ることに成功した.それよりも低圧条件,あるいは同圧力でもより低温か高温の条件では,いずれもグラファイト±立方晶ダイヤとの混合物として回収された. これらの成果については,すでに昨年8月に国内特許出願済みで,さらにはJSTの支援を受けて今年の2月にはPCT外国特許出願も行っており,産業利用という点においても高い評価を受けている.平成25年度は,合成試料の大型化を行い,光学特性や硬度,弾性特性などの物性測定を本格的に始める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,前年度に行ったダイヤモンドアンビルセル実験の結果を踏まえ,マルチアンビル高圧装置を用いて直径2mmのバルク出発試料(高配向グラファイト)を用いた高圧実験を行った.その結果,六方晶ダイヤモンド単相バルク体の合成に必要な温度圧力条件が明らかとなり,物性測定に使用可能な直径2mmほどのバルク体試料を得ることに成功した.また得られた試料のナノ~ミクロスケールにおける微細構造についても電子顕微鏡観察を通して理解を深めた.合成実験の方法および合成物質の特徴について,昨年8月に特許出願済みで,JSTの支援により本年2月にはPCT外国出願も済ませている.成果公表の点においても,当初に掲げた予定通り,きわめて順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,高圧セルパーツの見直しを行い,さらに大型(径3mm,高さ2mm)の六方晶ダイヤ単相試料を合成し,光学測定のほか,圧入硬度の測定や弾性波速度測定についても本格的に行う予定である.このうち,超音波パルス法を用いた弾性波速度測定に最も力を入れたい.本技術は,同部局で開発,改良されてきた確立された手法で,測定に適したクラックや空隙のない緻密な焼結試料さえ得られれば,良質な速度データが得られると期待される.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物性測定に適した大型試料の合成実験に必要な出発試料(高結晶性グラファイト)や高圧セルパーツ(セラミクスなど),および電子顕微鏡用の消耗品を購入予定である.また国内外の学会において積極的に成果公表を行う予定で,そのための旅費や論文投稿費も支出予定である.
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Research Products
(9 results)