2011 Fiscal Year Research-status Report
錯体重合法を用いた難合成ヘキサフェライトの単相合成と電気磁気効果の評価
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23760641
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
菊池 丈幸 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (50316048)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 機能性セラミックス |
Research Abstract |
本研究では,2010 年に室温・弱磁場下で強い電気磁気効果を示すことが報告され,新しい原理の不揮発性メモリ等の新規な磁気デバイスへの応用が期待されながらも,従来のセラミックス合成法では合成が困難であり,これまで単相合成の成功例が無かったSr3Co2Z 型フェライトを中心とした新規なヘキサゴナルフェライトについて,種々の溶液プロセス(主として錯体重合法)を駆使した合成を試みた.平成23年度は合成法として主に錯体重合法を用い,SrO-CoO-Fe2O3系を中心とする様々な物質系において,Z 型,U 型構造を有する新規ヘキサゴナルフェライトの高純度・高品位合成を実現し,それらの磁気特性(静的磁気特性,高周波応答および電気磁気効果)を明らかにすることを目的として研究を行った.Sr3Co2Zフェライトを軸としたCo サイトへの種々の2 価遷移金属イオンによる置換を試み,Sr4Co2U フェライトについても,錯体重合法を用いた単相合成を試みた.その結果,Sr3Co2ZのCoサイトをZnで完全に置換することに成功し,Sr4Co2U フェライトについてはZnのみならずCuやNiでも部分置換が可能であることを明らかにした.またそれらの磁気特性(室温における磁化曲線,弱磁場下における磁化の温度依存性,室温における複素透磁率の周波数依存性)を明らかにした.また一部の元素置換試料において抵抗率が低下することが明らかになり,Feの一部が2価となっていることが示唆された.そこで種々の条件下で酸素アニールを行った結果,抵抗率を上昇させることができ,電気磁気特性の評価に適した試料を得ることが可能になった.得られた研究成果の一部について関連学会における口頭発表(7件)と論文発表(3件)を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
物質合成に関しては当初の計画通り進展しており,種々の組成を有する新規な難合成ヘキサフェライトの単相合成に成功している.またそれらの基礎的な磁気特性の評価も実施した.しかしながら,電気磁気特性の評価において必要不可欠な電磁石の詳細な仕様策定が難航しており,得られた試料の電気磁気効果を評価するには至っていない.
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Strategy for Future Research Activity |
早急に電磁石の詳細な仕様を決定し,導入するとともに,電気磁気効果の測定・評価システムを構築する.種々の化学組成,結晶構造を有するヘキサフェライトの高配向焼結体を作製し,電気磁気効果の評価,静的磁気特性(磁化曲線,磁化の温度依存性など)の測定を実施する.また磁気デバイス応用に必要不可欠な複素透磁率および複素誘電率の高周波応答特性の評価を行う.ベクトルネットワークアナライザーを中心とした測定系を使用して,複素透磁率および複素誘電率を算出する.得られた研究成果の一部は関連する国内学会および国際会議にて発表し,学術雑誌への論文投稿を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に詳細な仕様を決定できなかった電磁石について,早急に導入し電気磁気効果の測定系を確立する.なお,電磁石の価格が次年度使用額を超えた場合は,次年度の物品費と合算で購入する予定である.その他の消耗品や旅費等については,おおむね当初の研究計画通りに使用する予定である.
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