2011 Fiscal Year Research-status Report
交流磁場中で著しく発熱するガーネット系フェライトの開発と球状化
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23760645
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Research Institution | Niihama National College of Technology |
Principal Investigator |
平澤 英之 新居浜工業高等専門学校, 環境材料工学科, 助教 (60511540)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 無機材料 / 磁性材料 / 交流磁場 |
Research Abstract |
磁性材料を癌腫瘍患部に堆積させ、交流磁場により発熱焼灼する「交流磁場焼灼法」が注目されている。本治療技術の確立のために、交流磁場中で高い発熱能力を示す磁性微粒子の作製が求められている。そこで本研究では、発熱能力の高いフェライト作製法を確立するため、Y3Fe5O12を基本としたフェライト粒子を作製し、交流磁場中での発熱実験を行った。得られたフェライトについては、(1) Y3-XGdXFe5O12などのイオン置換、(2) 粒子成長制御、(3) ビーズミルを用いる物理的粉砕、の項目についてフェライトの発熱能力と関連させ実験を行い、交流磁場中での発熱メカニズムについて探った。また、(4)塞栓用フェライト球状粒子の作製について、スプレードライ装置を用いて作製し、交流磁場中での発熱特性について検討を行った。(1) Y3-XGdXFe5O12などのイオン置換、(2) 粒子成長制御実験、を行った結果、逆共沈法で作製し1100℃で焼成を行ったY1.5Gd1.5Fe5O12は、これまでで最大の発熱能力を示した。これは、立方晶と斜方晶の混合相であるフェライトが1100℃の焼成により相変態し、立方晶の単相となったことにより結晶歪みが生じ、ヒステリシス損失・ネール緩和による発熱能力を増大させたと考えられる(Materials Letters, Vol.65, Issue10, pp1454-1456にて報告)。(3) ビーズミルを用いる物理的粉砕の実験から、結晶子径15nmまで粉砕を行う事で発熱能力が急激に上昇することが分かった。これは、超常磁性を示す粒子サイズであることから、ネール緩和による発熱であると考えられる。(4) 塞栓用フェライト球状粒子の作製について、ビーズミル粉砕を行った後、スプレードライにより球状化した粒子は、分級することで約13%の収率で球状粒子を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画では、(1) Y3-XGdXFe5O12などのイオン置換、(2) 粒子成長制御、(3) ビーズミルを用いる物理的粉砕、の項目について、発熱能力の向上とその発熱メカニズムを明らかにすることを目標としていた。以上3つの項目について実際に研究を行った結果、磁性材料の発熱能力については想定していた以上の向上に成功したため、期待以上の成果を得られていると考えている。しかし、発熱メカニズムの解明については、微粒子化を行うことでヒステリシス損失による発熱に加え、ネール緩和による発熱機構が出現する事を発見し、現在のところ発熱能に依存する割合を明確に区別することは困難な状態である。塞栓用球状粒子の作製について、これまで球状フェライトを溶融により作製するためには5000℃以上の超高温中に材料を粉霧溶融する必要があり、企業に依頼して作製したところ20-30μmの球状フェライトの収率は原料からの1%にも満たず、また、高温焼成により材料の交流磁場中における発熱能も著しく低下した。そこで、本研究では、市販品のY3Fe5O12についてビーズミル粉砕を行い微粒子化させ、スプレードライを用いて作製したところ約13%の収率で球状粒子を得ることができた。さらに、発熱能力も低下せず、高い発熱能力の有する球状粒子の作製に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究テーマを平成24年度も引き続き研究を行なう。ガーネット系R3Fe5O12フェライトは全ての希土類元素(R)で作製が可能であるためその組成や焼成温度など、パラメータが非常に多く、継続して研究を行う必要がある。その過程においてより発熱特性の優れた材料や作製条件が発見される可能性がある。また、今年度の研究により作製したY1.5Gd1.5Fe5O12は、立方晶と斜方晶の混合相から高温焼成により相変化し立方晶の単相となる温度で、最大の発熱能力を有することが分かった。このような相変化が発熱能力に影響を与える材料として、Mg1-XCaXFe2O4系フェライトをこれまでに報告しており、相変化と発熱能力の関係について見出す必要があると考えられる。 これまでに、物理的粉砕により得られた材料については、結晶子径10数ナノメートル程度で発熱能力が向上することが分かっており、さらに700℃以下の低温焼成により発熱特性がさらに向上することを見いだしている。これは、わずかな粒子成長が結晶子に何らかの影響を与えていると考えられ、この機構についても検討を行う必要がある。そこで、発熱特性の良いフェライト材料について、ビーズミル粉砕及び低温焼成を行う事で、発熱能力の向上と発熱機構の解明を行いたいと考えている。そこで、ビーズミル粉砕装置の購入が必須であると感じている。 また、塞栓用球状材料に関しても、スプレードライの液滴のサイズが収率を向上させる大きな要因であることから、液体の粘度を変化させる添加剤を変化させ、収率の向上を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
DDSを用いた交流磁場焼灼療法に磁性材料を応用する場合、フェライト粒子をリポソーム中へ包埋する必要があることから、粒子径50nm以下の微粒子を作製することが必須である。また、磁性材料は微粒子化により磁気的性質が大きく変化し、単磁区構造となる結晶子径10数ナノメートル程度で発熱能力が向上することが分かっている。さらに、ビーズミル粉砕により微粒子化した磁性材料を700℃以下の低温で焼成することで発熱特性がより向上することを見いだしている。しかし、発熱メカニズムの解明については、微粒子化を行うことでヒステリシス損失による発熱に加え、ネール緩和による発熱機構が出現する事を発見しており、材料の発熱に影響を与える因子について明確にはできていない。このように、交流磁場焼妁法への応用と発熱メカニズムの解明には、フェライト材料の微粒子化が必須である。そこで、粉砕装置である『ビーズミル』により、フェライトの微粒子化を精力的に行い、優れた発熱能を有する材料の開発と発熱に影響を与える因子について特定する必要がある。H23年度当初に購入を予定していた加温実験装置については、共同研究を行っている愛媛大学から装置を一部借り、研究を行う事ができたため、H24年度の予算に配分し粉砕装置『ビーズミル』をH24年度購入物品として計上する。
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