2011 Fiscal Year Research-status Report
イオン照射を用いた微細組織制御によるヘテロ構造SiCナノチューブの創製とその機能
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23760646
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
田口 富嗣 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (50354832)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | SiCナノチューブ / イオン照射 / 微細組織観察 / 透過型電子顕微鏡 |
Research Abstract |
これまでに創製に成功している多結晶SiCナノチューブを、原子力機構 高崎研究所TIARA照射施設にて、照射温度、イオン種、照射量をそれぞれ変化させながら、系統的にイオン照射を行った。その後、透過型電子顕微鏡(TEM)で微細組織変化を観察した結果、900℃におけるイオン照射により、原子がはじき出され、高温における原子の拡散、再配列によるSiC粒子の粒成長が促進したため、粒径が大きく単結晶SiCナノチューブが合成できることを見出した。また、200℃におけるイオン照射では、はじき出された原子が拡散及び再配列することができないため、アモルファスSiCナノチューブが合成可能であることを明らかにした。このように、多結晶SiCナノチューブに対して、照射温度を変化させてイオン照射することにより、単結晶もしくは、アモルファスSiCナノチューブの合成が可能であることを明らかにした。さらに、照射温度100℃において、照射量を最適化させることにより、多結晶SiCナノチューブから、数nmから十数nm程度の大きさのSiC微結晶が残存した微結晶SiCナノチューブの合成も可能であることを見出した。このように、低温イオン照射では、多結晶SiCナノチューブから、微結晶SiCナノチューブへ、さらに照射量を増加させることで、アモルファスSiCナノチューブへと変化することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の計画は、多結晶SiCナノチューブから、単結晶SiCナノチューブ、アモルファスSiCナノチューブ及び微結晶SiCナノチューブと結晶サイズの異なるSiCナノチューブを合成することを目標としていたが、そのすべての結晶サイズのSiCナノチューブの合成に成功し、それらの合成条件の最適化も行ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度において確立した単結晶、微結晶及びアモルファスSiCナノチューブの創製条件により、多結晶SiCナノチューブの前面にマイクログリッドを設置して、イオン照射を行う。この方法により、多結晶SiCナノチューブとそれぞれの照射条件により創製される単結晶、微結晶もしくはアモルファスSiCナノチューブとのナノヘテロ構造を有するSiCナノチューブ(多結晶-単結晶、多結晶-微結晶や多結晶-アモルファス)の創製を試みる。同様に、各条件でイオン照射したナノチューブを、その後、さらにマイクログリッドを設置して、その他の条件でイオン照射することにより、それぞれのイオン照射条件で創製した微細組織のナノヘテロ構造を有するSiCナノチューブ(単結晶-微結晶、微結晶-アモルファスやアモルファス-単結晶等)の創製も試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
原子力機構高崎研にてイオン照射を行っているため、原子力機構 東海研-高崎研間の出張旅費を使用する。また、イオン照射後のSiCナノチューブの微細組織観察を透過型電子顕微鏡で行うために、本装置の消耗品を購入する予定である。さらに、得られた研究成果を学会発表するための旅費及び参加費を使用する予定である。
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