2011 Fiscal Year Research-status Report
固体/イオン液体界面相におけるイオン輸送メカニズムの解明
Project/Area Number |
23760656
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宇根本 篤 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10551525)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | イオン液体 / 表面 / 疑似固体 / イオンダイナミクス / 全固体 / リチウムイオン二次電池 |
Research Abstract |
イオン液体は固体表面と強く相互作用し、擬似的に固体化されることが知られている。本研究では、このような固体表面におけるイオン液体でのイオン輸送メカニズムの解明を目的とした。イオン液体ー固体の状態図を作成した。この結果、両者の組成によらず、イオン液体は平均厚さ5-10 nm程度で固体化できることが分かった。これは、例えば酸化物に比表面積390 m2 g-1のフュームドシリカナノ粒子を使用した場合、体積分率で75-80 %に相当する。イオン液体ーフュームドシリカナノ粒子からなるコンポジットの導電率測定とパルス磁場勾配スピンエコーNMR法による拡散種の自己拡散係数測定を行った。イオン液体体積分率が小さくなるに従って導電率は単調に減少した。他方、拡散種の自己拡散係数はバルクのものと同程度の値であった。これは、コンポジットの導電率のバルクからの減少は単純にイオン輸送経路の減少のみで説明できることを示唆している。また、自己拡散係数をコンポジットの組成の関数として詳細に解析したところ、イオン液体体積分率が小さくなるに従い、酸化物表面の影響を受けてイオン液体の構造が変調することが分かった。イオン液体含有率の大きな組成の疑似固体を電解質へ、典型的な正極材料であるLiCoO2及び金属Li負極を利用して作製した全固体型リチウムイオン二次電池は、イオン液体バルクを電解質とした電池と比較して同等の容量と出力密度を有しており、安定に充放電サイクルをこなせた。これは、疑似固体電解質でのイオン輸送特性はバルクのそれから大きく逸脱しないということを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、イオン液体の固体表面でのダイナミクス解明を目的としている。固体表面でのイオン液体の構造とイオン輸送特性との因果関係に着目しているが、当初の計画通り、これらを評価するための評価法とその解析法の確立に取り組んだ。イオン液体と固体からなるコンポジットは固体として取り扱えながらも液体の輸送メカニズムでリチウムイオンが輸送される固体電解質を作製できた。作製した試料を利用してデバイスを構築し、これが安定作動できることを実証した。
|
Strategy for Future Research Activity |
イオンダイナミクスモデル構築に向け、導電率測定、自己拡散係数測定、分光測定を継続的に行い基礎データの蓄積に努める。本年度に備品として計算機を購入し、予備実験を行ってきたが、次年度はこれを利用して構造モデルを導く。実験結果を一貫して説明するイオンダイナミクスモデル構築を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額と併せ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
|
Research Products
(12 results)