2011 Fiscal Year Research-status Report
測定応力に基づく遮熱コーティングシステムでの剥離の定量評価と剥離抑制機構の付与
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23760662
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
長谷川 誠 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50376513)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 界面剥離 / 塑性変形 / 塑性変形 |
Research Abstract |
本研究ではTGO層中の局所的な残留応力成分を同定し、残留応力成分や分布を基に応力基準での剥離開始条件や界面剥離機構の解明と、金属BC層の塑性変形を積極的に利用することにより剥離進展時の界面剥離エネルギーを増大させて界面剥離を抑制する機構を付与した新規TBCsの開発を目指している。本年度の実績は、以下の通りである。(1)BC層のコーティング・熱処理条件の確立:コールドスプレー法によってCoNiCrAlY合金をBC層としてNi基超合金へコーティングした。空孔率の低い緻密なBC層について熱処理を行う候補材料として選定した。BC層をコーティングした材料に対して熱処理による組織制御を施した。降伏応力が低いと予想される結晶粒径の大きい複数の熱処理条件を選定した。選定後、8wt%Y2O3-ZrO2を大気プラズマ溶射法によってTC層をコーティングしTBCsを作製した。(2)硬さ試験によるBC層の降伏応力の評価:選定した複数条件のTBCsに対して大気熱暴露を温度(1173~1423K)、時間(10~200h)を変えて行った。熱暴露前後でのBC層に対して降伏応力を評価した。(3)TGO層の残留応力成分評価:熱暴露後のTBCsに対して、TGO層の残留応力成分を蛍光分光法により測定し、TBCsの応力基準での界面剥離機構や剥離開始条件を検討するとともに、組織制御したBC層の降伏応力の低下がTGO層の残留応力の緩和に与える効果を評価した。(4)TBCsの界面剥離特性の評価:界面剥離の進展はせん断負荷によって生じるため、大気熱暴露前後により組織変化したTBCsに対して、せん断負荷による界面剥離強度(界面剥離ひずみエネルギー解放率)を測定した。組織制御したBC層の降伏応力の低下がせん断強度の向上に与える影響について評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の(1)、(2)、(4)についてはおおむね順調であるが、(3)については十分な評価ができておらず、やや遅れている状態にある。問題点としては、TGO層の結晶粒が小さく、応力成分分離が難しいことにある。結晶方位は電子線後方散乱(EBSD)法により取得できるものの、蛍光分光法では、レーザー径が大きいため、結晶方位に対応した結晶粒から得られた蛍光かどうかをうまく判断することができなかった。そのため、とりあえずは評価できているものの、正しい結果であるかをさらに吟味する必要がでている。正しく評価する解決策としては、EBSD測定により得られる菊池パターンのゆがみを直接読み取って応力成分を決定するウィルキンソン法を利用することを考えている。この場合は、結晶方位の情報とともに得られるため、残留応力成分の評価が正しくできると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ウィルキンソン法を利用したTGO層の残留応力成分評価:熱暴露後のTBCsに対して、再度、TGO層の残留応力成分を測定する。蛍光分光法では、「現在までの達成度」でも記載した通り問題があるため、対策として、測定には電子線後方散乱(EBSD)測定により得られる菊池パターンのゆがみを直接読み取って応力成分を決定するウィルキンソン法を用いることとする。測定データを基にTBCsの応力基準での界面剥離機構や剥離開始条件を検討する。(2)熱サイクルおよび熱・力学的負荷試験:選定した候補TBCsに対して、実使用環境を模擬したTC層側からの加熱による熱サイクルおよび熱・力学的負荷を加える。熱サイクルは、実使用環境に近い温度(1273~1423K)にて1時間毎の熱サイクルを加える。熱・力学的負荷も1273~1423Kにおける1時間毎の熱サイクルとともに、異なる繰り返し負荷応力(20, 40, 60 MPa)を加える。熱サイクルおよび熱・力学的負荷を加えた剥離前のTBCsを対象に、BC層の降伏応力、TGO層の残留応力成分、TBCsのせん断剥離特性を評価し、BC層、TC層のコーティングおよび熱処理条件の実使用環境下での有効性を確認する。さらに、TC層が剥離するまでTBCsに熱サイクルおよび熱・力学的負荷を加えて寿命を評価する。(3)結果のまとめ:熱暴露、熱サイクルおよび熱・力学的負荷がTBCsの応力基準での界面剥離機構や剥離開始条件に与える影響をTGO層での応力成分や最大応力値、応力状態を基に明らかにする。また、TGO層での残留応力成分や応力値、TBCsのせん断負荷による界面剥離特性や寿命の評価から最適なプロセス条件を見出し、剥離抑制機構を付与した耐剥離性の高い、新規遮熱コーティングシステムを実現する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年、学内業務により予定していた金属学会への出張を取りやめる事態となったため、次年度に使用する予定の研究費が生じた。一方、残留応力成分評価のため、EBSD装置を用いたウィルキンソン法による応力成分の測定を行う必要が生じたため、使用料が必要な外部の装置を借用する。また、レーザー加熱については、レーザー源不安定化のため購入を検討する。そのため、研究費の使用計画を以下の通りとする。(1)ウィルキンソン法による応力成分の測定:EBSD装置を用いたウィルキンソン法による応力成分を測定は、外部の装置を借用することで行わなければならない。試料を厳選することで、15日程度の使用で収まると考えられる。1日の使用料が約3万円との回答であったため15日の使用で約45万円が応力成分測定に見込まれる。(2)レーザー源:固体レーザー源の不安定化のため、信頼性の高い熱処理のため購入を検討することとした。グリーンレーザーを60万円と見積もっている。(3)熱・力学負荷試験用治具の作製・消耗品:実使用環境を模擬したTC層側からの加熱による熱・力学的負荷をTBCsへ加えるにあたり、既存の万能試験機を改修して行う。そのための治具を作製する。ステンレス、ニッケル基超合金丸棒、窒化ケイ素圧縮棒、変位計、温度計、記録計等を購入予定であり、19万円を考えている。また、試験片用基材、研磨剤等の消耗品を10万円と見込んでいる。(4)旅費:調査・研究、研究成果発表のため、日本金属学会秋季大会(愛媛大学)へ参加する予定である。旅費として7万円を計上することとする。
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