2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23760664
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 尚 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50402649)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 相変態 / 表面巨大ひずみ / EBSD / 鉄鋼材料 / ショットピーニング |
Research Abstract |
本研究は,Fe-Ni合金へのショットピーニングによって加工表面近傍に形成した変質層近傍の転位組織および変質層の形成機構を究明することを最終目的とする.平成23年度は,Fe-Ni合金およびSUS304に対してショットピーニングを施し,噴射圧および加工時の温度が加工表面の相変態挙動に及ぼす影響について調査した.主な結果は以下の通りである.(1)ショットピーニングにおける噴射圧が相変態挙動に及ぼす影響Fe-33mass%Ni合金およびFe-30mass%Ni合金に対して熱処理を施すことによって,それぞれの合金に対し,オーステナイト相を多く有する試料およびマルテンサイト相を多く有する試料を作製した.それらの試料にショットピーニングを施した結果,マルテンサイト相を多く有する試料の加工表面近傍においてマルテンサイト相からオーステナイト相への逆変態が生じた.この逆変態によって生じるオーステナイト相の体積分率は噴射圧が高くなるにつれて大きくなる.また,Fe-30mass%Ni合金は,Fe-33mass%Ni合金に比べて逆変態が生じにくい.これらの結果から,この逆変態挙動は加工中の圧力および材料の相変態温度に大きく依存することが明らかとなった.さらに,この現象は,PatelとCohenによって報告されている応力と相変態温度の関係に基づいた熱力学の観点から説明することが可能であることが分かった.(2)加工時の試料温度がショットピーニングに伴う逆変態挙動に及ぼす影響SUS304に冷間圧延を施すことでマルテンサイト相を多く有する試料を作製した.作製した試料に対し,室温あるいは100℃の温度にてショットピーニング試験を施した.その結果,室温で加工を施した試料では逆変態が生じなかったが,100℃で加工を施した試料では逆変態が発生した.この現象も,前述と同様に熱力学の観点から説明可能である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画では,(1)加工表面近傍における相変態挙動,(2)加工表面に形成する変質層近傍での転位組織および(3)変質層内部における結晶粒径を明らかにすることを目的とした.(1)の課題においては,噴射圧力,試験温度および材料の相変態温度がショットピーニングに伴う相変態挙動へ及ぼす影響について明らかにすることが出来た.また,(2)の課題においては,巨大なせん断ひずみによって生じるせん断帯が変質層内部および直下に形成していることを見出し,変質層の形成過程を示唆する転位組織を明らかにした.一方で,(3)の課題に関しては,透過型電子顕微鏡で用いる薄膜試料作製中であるが,当初の実施計画において平成24年度も継続課題としており,計画通り完了する予定である.以上の観点から,本研究はおおむね当初の計画通り進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究では,(1)ショットピーニング試料の変質層内部における結晶粒径測定および(2)ショットピーニングに伴う加工表面近傍の相変態挙動の熱力学的評価を行う.(1)の課題は,平成23年度からの継続課題であり,透過型電子顕微鏡を用いて加工変質層の微細組織を明らかにし,この加工変質層の形成過程を検討する.(2)の課題では,ショットピーニングによる逆変態のメカニズムを熱力学に基づいた計算を行うことによって検討することである.平成23年度の研究では,このショットピーニングに伴う逆変態が加工表面近傍の残留応力に起因した相変態温度の変化によって生じることを明らかとした.そこで,(2)の課題では加工表面近傍の残留応力を計算によって推算し,前述の考察の妥当性を評価する.また,これまでの研究結果に基づいて,最終目標である表層巨大ひずみ加工に伴う変質層の形成機構および相変態機構について検討する.さらに,ステンレス鋼に対しても同様の実験を行うことで,実用鉄鋼材料における本現象の発現可能性を確認する.平成24年度は,平成23年度の研究成果をまとめ国際学術雑誌への投稿を行う.さらに,研究成果を国内外の学会で発表し,研究成果のアピールを積極的に行う.そして,最終的にこれまでの成果を報告書としてまとめる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,実用鉄鋼材料へのショットピーニングに伴う逆変態挙動を調査するために,試料を加熱するための加熱ヒーターを購入する.それ以外の経費は,組織観察試料を作製するための消耗品,学会発表のための旅費および投稿論文の投稿費として用いる.
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Research Products
(7 results)