2011 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ材料試験による準安定オーステナイト系ステンレス鋼の水素脆化機構の解明
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23760671
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
峯 洋二 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90372755)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 機械材料・材料力学 / 格子欠陥 / 構造・機能材料 / 水素 |
Research Abstract |
本研究の目的は,マイクロ材料試験と金属組織学的評価により,オーステナイト系ステンレス鋼の水素脆化機構における加工誘起マルテンサイト変態の役割を把握するとともに,変形過程で形成される双晶界面や粗大すべり帯といった微細構造と水素脆化機構の関係を明らかにすることである.これにより,低炭素社会の実現に向けて一層期待が高まっている耐水素高強度材料の開発および使用に有用な指針を与えることができる.研究初年度の23年度は,準安定オーステナイト系ステンレス鋼SUS304の溶体化処理材とその水素チャージ材について,マイクロ引張挙動の解析と後方散乱電子線回折(EBSD)解析および透過電子顕微鏡(TEM)観察を行った.これにより,オーステナイト鋼の塑性変形挙動と加工誘起マルテンサイト変態に関する重要な知見を得ることができた.SUS304のマイクロ引張挙動は,マルテンサイト変態の形成過程を反映した2段階ひずみ硬化を示した.水素の添加によりマルテンサイトの形成開始が早まるが,一方で,マルテンサイト形成によるひずみ硬化率は減少した.EBSD解析とTEMによる金属組織学的評価により,多くのすべり系が活動するときに選択されるNishiyama-Wassermanの関係をもつマルテンサイトバリアントの発達が水素の存在により抑制されることが示された.水素の存在が活動するすべり系の数を減少させ,すべり帯の間隔を広くするという報告と合わせて考えると,変形による下部組織がマルテンサイト形成に強く影響し,早期の塑性不安定をもたらすことで,水素脆化が起こることが示唆された.これらの結果をまとめた論文が国際専門雑誌に掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
溶体化処理材におけるマイクロ変形挙動に及ぼす水素の影響については,当初の計画通りの成果が得られている.双晶界面を含む試験片におけるマイクロ引張試験について,今年度実施をしなかったが,次年度に疲労き裂先端部に形成される微細構造を取出し,機械的性質を評価することを計画している.実際のき裂先端の構造に支配的に現れない場合は,検討から除外することも考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
疲労における水素脆化機構を解明することが特に重要である.本年度の検討で水素の存在により変形で形成される下部組織が大きく異なり,それが水素脆化につながることが示唆された.そこで,バルクの溶体化処理材とその水素チャージ材について,疲労試験を行い,き裂先端部に形成される微視構造を取出し,マイクロ材料試験により直接評価を行う.特に,EBSD解析を併せて行い,マルテンサイト,双晶の役割に注目する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度繰り越し分は,一部実験装置の整備とその他,分析機器使用料に充てる.また,次年度の結果を取り纏めて学会発表を行う.
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Research Products
(4 results)