2012 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ材料試験による準安定オーステナイト系ステンレス鋼の水素脆化機構の解明
Project/Area Number |
23760671
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
峯 洋二 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (90372755)
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Keywords | 構造・機能材料 |
Research Abstract |
マイクロ材料試験と材料組織学的評価により,オーステナイト系ステンレス鋼の水素脆化機構における加工誘起マルテンサイト変態の役割を把握するとともに,水素存在下で強加工を受けて形成される組織と塑性変形の局在化過程の関係を明らかにする.これにより,低炭素社会の実現に向けて一層期待が高まっている耐水素高強度材料の開発および使用指針を与えることができると確信している. 本年度の研究では,水素存在下で加工を受けて形成される組織の力学特性に注目した.き裂先端における高ひずみ領域で発達する微視組織を模擬するために,水素チャージ後に高圧ねじり加工を施した.前年度までの研究から,準安定オーステナイト鋼では水素の影響によりマルテンサイトの形成が抑制されることがわかっている.そのため,水素存在下で形成されるマルテンサイトのみならず,取り残された,高密度の転位を含むオーステナイトについても力学特性を把握することが重要である.そこで,加工誘起マルテンサイト組織および転位を含むオーステナイト組織から個別にマイクロ引張試験片を切り出して引張特性評価を行った.水素存在状態で形成されたマルテンサイトは,水素が存在しない場合に形成されたものに比べて,降伏強度が低く,加工硬化指数も小さかった.また,取り残されたオーステナイト組織についても同様の結果が得られた.次に,オーステナイト/マルテンサイト二相が含まれるように試験片を取出し,マイクロ引張試験によるその場観察を実施した.最初オーステナイト相にひずみの集中がみられたが,その後,既存のマルテンサイト相内で破断に至った.また,破断後に電子線後方散乱回折解析により調査を行ったところ,最初オーステナイトであった領域もマルテンサイト変態していた.これらのことから,水素存在下で形成されるマルテンサイトは水素のない状態で形成されるマルテンサイトよりも脆弱であることが示された.
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Research Products
(8 results)