2012 Fiscal Year Research-status Report
フェロアロイを用いたV系水素貯蔵材料の創製と貯蔵水素の挙動の解明
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23760677
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
浅野 耕太 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 主任研究員 (30415640)
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Keywords | 水素貯蔵材料 / 核磁気共鳴法 / 原子の拡散 / フェロアロイ |
Research Abstract |
室温付近において、V金属は低水素吸蔵量側から1水素化物および2水素化物を生成する。1水素化物の安定性は2水素化物に比べて極めて高く、大気圧から数MPaの水素圧力範囲では、1水素化物-2水素化物間の相変態によりVは水素を吸蔵あるいは放出する。 本研究では、フェロバナジウムを水素貯蔵材料に使用することを目指して、平成23年度は主に不純物酸素濃度がVの水素吸蔵放出性に及ぼす影響を明らかにした。その結果、酸素濃度が約3000~4000 mass ppm以上になると、水素吸蔵量が大幅に減少することと、水素化物中の水素の拡散が遅くなることが分かった。24年度は、その不純物酸素によるVの水素吸蔵量の減少は、本来2水素化物が単相で生成するような水素圧力下でも、酸素濃度が高まると2水素化物相の他に体心正方格子がひずんだ1水素化物相に近い構造の水素化物相も生成することによることが明らかになった。 また23年度に、フェロバナジウムにはAlあるいはSiも数%のオーダーで含まれることが分かったため、24年度はAlがVの水素吸蔵放出性に及ぼす影響を調べた。その結果、AlをVに添加すると、水素吸蔵量が減少すること、2水素化物が生成する平衡水素圧力が上昇することがそれぞれ分かった。また、Vの1水素化物中で水素は体心正方格子の八面体サイトを本来占有するが、Al添加により水素は四面体サイトにシフトすることが分かった。現段階ではこの水素のサイトのシフトが、Vの水素化の相変態さらには水素吸蔵量に影響を及ぼしているものと推察している。他方、Vの1水素化物中の水素の拡散はAl添加により速くなることが明らかになった。 今後は、本研究の本題であるFeがVの水素吸蔵放出性に及ぼす影響について詳細を調べると共に、フェロバナジウム基の水素貯蔵材料の開発を目指す予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにフェロバナジウムにはV、Feおよび酸素以外にAlおよびSi等の不純物も含まれることが分かったため、当初の研究計画にはなかったが、平成24年度は主にAlがVの水素吸蔵放出性に及ぼす影響を詳細に明らかにした。V金属は、Al金属によるV酸化物の還元(テルミット法)にて精錬されることが一般的で、酸素およびAlの両方の影響を明らかにすることは、今後フェロバナジウム基の水素貯蔵材料を設計するためには重要な情報になるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、FeがVの水素吸蔵放出性に及ぼす影響を明らかにし、これまでの酸素およびAlに関する結果と併せて、フェロバナジウム基の水素貯蔵材料の開発指針を立てる。また、研究費の使用については、24年度終了時に概ね計画通りであったため問題は無いと判断される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、引き続き固体核磁気共鳴実験に関する消耗品費と、成果を学会で発表するための旅費等への支出が主に見込まれる。研究計画および研究費の使用予定には実質的な変更は無い。
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