2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23760685
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菅原 優 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40599057)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 白金単結晶 / 白金触媒 / マイクロ電気化学セル / 溶解 |
Research Abstract |
白金の溶解と表面構造の変化に及ぼす面方位の影響を明らかにするため、白金単結晶の溶解に関する検討を行う。そのために白金単結晶を準備する必要があるが、一般的に知られている白金単結晶の作製法Clavilier法は容易でなく、量産するのは困難であるため、マイクロ電気化学セルを用いた新しい白金単結晶の電気化学測定手法の開発に取り組んだ。この手法は、多結晶白金を電子線後方散乱回折法(EBSD)で解析し、表面に存在する粒界や面方位を明らかにした上で、その単一結晶面を狙ってマイクロ電気化学測定を行うものである。まずマイクロ電気化学測定を実施できるまで結晶粒を粗大化させる目的で、白金試験片の熱処理の検討を行った。その結果、1823Kで8時間熱処理を行うと300~400μmまで結晶粒が成長することが分かり、今後このこの熱処理を施した試験片を測定に用いることにした。マイクロ電気化学セルは、四方ジョイントにマイクロキャピラリー、参照電極、補助電極を差し込んで作製し、このジョイントを光学顕微鏡の対物レンズ用レボルバーに取り付けることで、位置決めした領域の電気化学測定を可能とした。また、nA~pA程度の電流をノイズの影響を軽減しつつ測定する必要があるため、乾電池駆動のポテンショスタットを自作した。このマイクロ電気化学セルを用い、白金の単一結晶面を狙って電気化学測定を行ったところ、粒界を含む領域と比べ、白金の酸化物形成(OH、Oの吸着)による酸化電流値が大きく抑制されていることが分かった。この結果は、多結晶白金において粒界が優先的な酸化サイトとなっていることを実験的に初めて示したものであり、白金の溶解を議論する上で非常に重要な知見である。現在は、このマイクロ電気化学セルを用いて、各面方位の電気化学挙動の測定を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
nA、pAレベルの非常に微小な電流を測定する、「マイクロ電気化学測定システム」の構築は容易でなく、特に乾電池駆動のポテンショスタットや溶液漏れのないマイクロキャピラリーの作製に長い時間を要した。そのため、今年度はこのマイクロ電気化学セルの作製とその信頼性の評価を行い、単一結晶面の劣化挙動の解析は次年度行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に作製したマイクロ電気化学セルを用いて、単一結晶面ごとの電気化学測定を行い、各面方位における電気化学特性を明らかにするとともに、PEFCのカソード環境を模擬した電位サイクル試験を行い、表面構造の変化(ラフニング)を電気化学特性の変化を通して解析する。また測定後の溶液をICP質量分析(ICP-Mass)にて解析し、各面方位ごとの溶解特性も明らかにする。また基本指数面であるPt(100)、Pt(110)、Pt(111)を購入し、この基本面方位における単結晶の劣化挙動を明らかにした上で、マイクロ電気化学測定により得た各面方位の電気化学特性から、高い耐久性を持つ白金の表面構造を検討する。同様にPtCo、PtNi等の白金合金単結晶の溶解特性も解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、マイクロ電気化学測定システムにおける消耗品や、Pt(100)、Pt(110)、Pt(111)、及び白金合金作製のための試料金属の購入、発表・情報収集を行うための旅費、投稿論文の掲載料に充てる。
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