2011 Fiscal Year Research-status Report
コリレイティブマイクロスコープ解析に基づく汎用マグネシウム合金押出材の高速化
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23760691
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
本間 智之 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (50452082)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | マグネシウム / 押出し |
Research Abstract |
高速押出しが可能なMg合金の開発を目的に、汎用元素を組み合わせたMg合金を選択し、通常の押出し加工を施した際の第2相粒子の分散挙動および機械的性質の関係をコリレイティブマイクロスコープを用いて解析した。第2相粒子の微細分散が可能となれば、押出し加工中に生成する動的再結晶による結晶粒微細化が期待できる。そこで、押出し加工中にいかに微細析出物分散できるかが高強度化の鍵となる。析出物を微細かつ大量に分散することで、結晶粒径をZパラメータで整理したグラフのひずみ速度の大きな領域で見られる右上がりの挙動を右下がりにする可能性を検討した。 用いた合金系は、Mg-4Al-3Ca-0.3MnおよびMg-6.4Zn-0.2Ca-0.2Mn(mass%)合金の2種類とした。押出し速度は0.1mm/sと一定とし、押出し加工中の動的再結晶挙動を光学顕微鏡および後方散乱電子回折法を用いて解析した。Mg-Al-Ca-Mn合金では金型鋳造材および断熱鋳型連続鋳造材の2種類のビレットを用いて、押出し材の組織解析を行い、初期組織が押出し後の組織形成に及ぼす影響も検討した。押出し組織の特徴として、押出し棒の外周部付近の結晶粒が微細化する傾向が見られ、中心部では未再結晶領域が残留する傾向が認められた。この未再結晶領域は押出し方向に対して最密六方晶のc軸が垂直になる、底面集合組織を形成する。TEMおよびHAADFにより動的再結晶粒、未再結晶領域ともに板状のAl2Ca相および球状のAl-Mn析出物が確認され、動的再結晶粒の成長を抑制するピン止め効果および析出強化を同時に満たすことを確認した。 一方、Mg-Zn-Ca-Mn合金では、押出し温度の結晶粒径および機械的性質への影響を検討し、押出し温度の低下および時効処理により、結晶流の微細化が促進され、0.2%耐力が290MPaを越える材料の創製に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
高速化の実験の準備は着々と進めており、次年度に成果が上がることが期待できる。今年度はMg-4Al-3Ca-0.3MnおよびMg-6.4Zn-0.2Ca-0.2Mn(mass%)合金に着目してコリレイティブマイクロスコープを用いた解析を行い、それぞれMaterial Science Engineering AおよびPhilosophical Magazineで成果発表を行った。また、Mg-4Al-3Ca-0.3Mn合金については、押出前の組織が押出後の組織に及ぼす影響もコリレイティブマイクロスコープを用いて解析を行い、その成果をMaterial Science Engineering Aに公表している。 この中で、金型鋳造後に押出加工を施したMg-4Al-3Ca-0.3MnおよびMg-6.4Zn-0.2Ca-0.2Mn合金において微細析出物を微細分散することで、押出し方向に平行に引張試験を行い、0.2%耐力331および290MPaの高強度化にそれぞれ成功している。また、押出前のビレット鋳造に断熱鋳型連続鋳造法を用いたMg-4Al-3Ca-0.3Mn合金では、組織の微細化および微細析出物の分散により、0.2%が409MPaを示す高強度押出材の創製にも成功しており、本研究の目的の一つであった400MPaを越える高比強度Mg合金押出材の開発を実現している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、汎用元素を用いて押出加工したMg合金を用いて、目的の一つであった耐力400MPを越える材料の創製に成功している。引き続き次年度は、平成23年度の成果を踏まえ、微細析出物を上手く利用した押出材の高速押出の実現を目指す。具体的には、比較的高い強度が得られたMg-Al-Ca-Mn合金をベースとして、押出加工中の荷重低減を目的に合金組成の希薄化を目指す。合金組成を希薄化することで押出加工中の最大荷重の低減を目指し、その結果、押出の高速化を実現させる。更に、高速押出しを比較的高い500℃程度の温度域で行うことで、押出加工中の動的析出を抑制できれば、母相中に溶け込んだ溶質元素を利用して、押出後の熱処理で0.2%耐力の向上が見込まれる。そこで、1mass%以下のAlおよびCaを添加し、高速押出しを行い、その後T5処理を施すことで、押出の高速化および押出材の高強度化の両方を達成することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に必要不可欠な消耗品の購入はほぼ済ませている。押出用金型、熱分析用消耗品、温度管理に必要な消耗品、透過型電子顕微鏡試料作製装置、その他必要経費である。 次年度は、基本的には成果報告用の出張費を中心として経費を使用させて頂く予定である。具体的には、国内でそれぞれ年に2回行われる日本金属学会および軽金属学会に参加し、関連情報の収集も行い予定である。また、3月にアメリカで開催されるTMS2013への参加も予定している。 一方で、高速押出材を実用化するために、車両メーカや素材メーカと打合せを行い、将来的に必要とされる機械的性質や材料創成技術、実機での高速押出しの可能性を話し合うための旅費を検討している。 その他、関連論文の投稿料として数十万円の支出を見込んでいる。
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