2011 Fiscal Year Research-status Report
超音速衝突個体セラミックス粒子接合メカニズムの解明と成膜技術としての確立
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23760696
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
山田 基宏 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00432295)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | コールドスプレー / 酸化チタン / ナノ構造 / 界面接合 |
Research Abstract |
原料粉末を超音速ガス流により加速し、固体のまま基材表面に衝突・偏平させることで付着・堆積させる成膜技術であるコールドスプレー法において、セラミックス粒子の付着メカニズムに関する調査を行った。各種基材上への酸化チタン成膜実験から、銅基材において特出した高い密着強度を示すことが明らかになった。この原因を調査するため、基材衝突・付着粒子断面形状観察、皮膜基材界面の透過型電子顕微鏡(TEM)による微細構造観察およびX線光電子分光 (XPS)による界面結合状態の分析等を行った。その結果、比較的軟質金属基材では粒子衝突に伴う基材表面の変形が起こり、それと共に表面酸化物が破断し新生面の露出が起こることが明らかになった。銅基材の場合は銅の新生面と酸化チタンの酸素成分が結合することで、強固な接合が起こることを確認した。ただし、同様に軟質金属材料であるアルミニウムを基材とした場合、厚く安定な表面酸化物は粒子衝突時に除去されず、新生面による強固な結合が起こらないため、密着強度が銅に対して低い結果となることが明らかになった。また、付着に対する粒子側のメカニズムとして、長音突衝突接合が可能な三大要素を満たす酸化チタン粒子の衝突・偏平現象を、付着粒子断面観察およびナノスクラッチ試験による個々の粒子の密着強度評価を用いて詳細に調査した。その結果、多孔質な凝集粉末が塑性変形するかのように偏平・付着している様子が観察された。また、衝突中心部が緻密化されると共に基材表面と強固に接合していることが明らかになった。これは一次粒子が結晶中に配列して二次粒子を形成いると共に、二次粒子同士は弱い結合で多孔質な三次粒子を形成する構造に起因する現象であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の実施内容として、当初目的としていた固体セラミックス粒子の接合メカニズムの調査についてはほぼ完了した。予定していたナノスクラッチ試験による粒子密着強度評価、付着粒子断面組織観察、および皮膜/基材界面のTEMによる原子レベルでの微細構造観察を実施し、メカニズムの解明が実現した。また、超音速衝突接合が可能な三大要素を満たす粒子の合成実験も実施し、積層成膜が可能な酸化チタン粒子の独自合成に成功している。ただし、その粒子合成条件の最適化には至っておらず、改善の余地があることから、達成度としては「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
界面での接合メカニズムの解明が実現し、粉末材料の重要性が明らかになったことから、超音速衝突接合を可能とする粉末材料の合成に関する研究を進めていく。具体的には、これまでに成功している酸化チタン粒子の合成に対し、粒子サイズ等の制御を行うための因子の特定や成膜プロセスにおいて最適な粒子合成条件の選定を行う。また、酸化チタン以外の材料として、同じ酸化物系セラミックスである酸化亜鉛を対象とし、三大要因を満たす粒子合成ならびに成膜実験を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に粒子合成に必要な反応容器を購入しており、また成膜実験に必要なコールドスプレー装置は研究室に既設であることから、平成24年度の研究費の使途としては主に粒子合成に用いる薬品類や、成膜実験に必要な加速ノズル、プロセスガス等の消耗品類を予定している。また、これまでの成果をまとめた学会発表や論文発表に対する旅費や投稿料等への支出も行う。
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