2012 Fiscal Year Research-status Report
マグネシウム合金板の繰り返し塑性変形におけるマルチスケール変形特性
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23760697
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浜 孝之 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (10386633)
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Keywords | マグネシウム合金板 / 繰り返し塑性 / 結晶塑性有限要素法 / 双晶変形 / 環境材料 |
Research Abstract |
本年度得られた成果を以下に箇条書きで示す. ①繰り返し引張-圧縮試験時のしわ抑え力および摩擦力を低下させることが前年度からの課題として残されていた.そこで,チャック方法を改良した新たなジグを製作した.その結果,チャック力としわ抑え力を独立させることに成功し,それに伴い摩擦力の低減も達成できた.またしわ抑え力の付与方法を改良したことで,実験の再現性も向上した.これより,試験方法のさらなる高精度化を達成できた. ②前年度の結果から,マクロな応力-ひずみ関係は圧縮ひずみ量に大きく影響されることが示唆された.本年度は,圧縮の予ひずみを付与した後に繰り返し引張-圧縮試験を行うことで,圧縮ひずみが加工硬化挙動に及ぼす影響を考察した.圧縮の予ひずみを付与することで,圧縮変形後期での加工硬化率がより低い繰り返し数から上昇し始めた.一方,引張変形後期に見られていたS字状の加工硬化挙動は,圧縮の予ひずみを付与すると見られなくなった.これらの傾向は,予ひずみ量が増すにつれて顕著になった.また組織観察を行い双晶の活動および回復を定量的に評価した結果,以上の挙動は主として双晶変形の活動と回復に起因することが示唆された. ③②から明らかなように,Mg合金板の変形挙動を結晶塑性有限要素法により予測するためには,双晶変形の回復の考慮が不可欠である.そこで,過去に提案された双晶活動モデルを発展させることで,新しい双晶回復モデルを提案した.本モデルを用いて反転負荷を伴う種々の負荷経路下で変形挙動の解析を行ったところ,応力-ひずみ線図を良好に再現できた.また,圧縮後の引張変形時に見られるS字状の加工硬化挙動の発現メカニズムについても,メゾスケールの変形挙動から明らかにできた. ④二軸引張試験機の開発を推進した.今年度は主にソフト面の開発を推し進め,ほぼ指令通りに作動することが確認でき,試験機の立ち上げがほぼ完了した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の研究実施状況報告書における”今後の推進方策”で挙げた通り,①試験精度の向上,②繰り返し変形中のメゾスケールでの変形に関する実験調査,③反転負荷を伴う負荷経路に対応した結晶塑性有限要素法解析プログラムの開発等をほぼ達成することができた.以上の結果を総合的に鑑みて,【おおむね順調に進展している】と判定した.
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね当初の予定通り研究が進展していることから,平成25年度も当初の予定通り研究を推進する所存である.具体的には,前年度の結果を受けて,以下の項目を実施する予定である. ①本年度の研究において,圧縮の予ひずみを付与した際の引張変形および圧縮変形後期の加工硬化挙動を明らかにした.一方,引張変形初期の加工硬化挙動にも圧縮予ひずみの影響が見られたものの,その詳細を明らかすることができなかった.引張変形初期では,変形を支配する因子がすべり活動から双晶回復に変化するため,加工硬化挙動の解明にはこの変形メカニズム変化を明らかにすることが重要である.そこで次年度は特に引張変形初期の加工硬化挙動に注目して検討を進める.ここではマクロ~ミクロまでの各種実験,また理論解析など多方面から検討を進める. ②平成24年度の研究で,双晶回復のモデル化に成功した.そこで,圧縮時の除荷や繰り返し反転負荷など,双晶回復が加工硬化挙動へ影響を及ぼしうる負荷経路を対象として解析を行い,実験的に得られた応力-ひずみ線図と双晶変形の相関に関する知見を理論的視点から詳細に検討する.また,各種数値実験により考察を補強する. ③二軸引張試験機を用いて,面内複合応力下での変形や交差効果などについて調査する. 最後に,本研究を総括することでマグネシウム合金の繰り返し塑性に関するマルチスケール変形特性を体系的に理解し,そのスプリングバックに与える影響を解明したい.そして,今後解決すべき課題の抽出を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,実験研究で使用する試験片はひずみゲージ,組織観察で用いる薬品などの消耗品を予算に計上している.またその他に,国内会議,国際会議につきそれぞれ一回ずつ参加すると試算して参加旅費を計上した.
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